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自分のやりたいことができるようになる 折れない心コーチング ーrescueJ’s blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。

折れない心 精神編 小型機墜落〜パイロットが考える最悪のシナリオ

ワシントン州で小型機が墜落する模様が、車載カメラの動画で報道されていました。これを見て、パイロットとして訓練していきたことを思い出しました。

www3.nhk.or.jp

 

 

離着陸時に一番事故が多い理由

 

 これは知っている人が多いと思いますが、ズバリ 

 

 エンジン出力を大きくコントロール(操作)するからです!

 

特に、離陸時は最大出力に近い状態まで、エンジンを酷使しますのでこの時にエンジントラブルになりやすいです。

 

何点か他の要因を並べてみると、

 

 ☑️ 離陸時は燃料満載(機体重量が重い)なのでエンジン出力の余裕がない。

 ☑️ 飛行場は動物、特に鳥が多いので離着陸時にエンジンに吸い込むトラブルに。

 ☑️ 混み合う飛行場だと、管制周波数での無線が多くなり、注意力が分散される。

 ☑️ 低高度において、速度の変化が大きく、機体のコントロールが難しい

 ☑️ ギアやフラップなど、離着陸時に操作するものが多い

 ☑️ 訓練生だと、離陸したのちのことを考えているので緊張している。

 

離陸時

 

 前述しましたが、離陸時に一番怖いのは、機体が重重量で、かつ標高が高いところからの離陸出力に余裕がないことです。

 

 日本の空港ではそんなに意識することはないのですが、海外の空港では標高が富士山くらいのところはザラです。

 

 日本という環境では、性能に余裕があっても、高温多湿の国や、高地に空港がある国では、同じ航空機でも出力の余裕に差が出てきますね。 

 

着陸時

 

 着陸時、いろいろなことを考えます。

高度処理はどこでするか、

着陸は、計器進入をするのか、有視界飛行で侵入するのか、

予定通りの時間に着陸できるか、

飛行場の風が制限以内であるか否か、

急激な天候の悪化がないか、

などなど、その時々でいろいろなことを考えながら機体を操作しています。

(僕が初めて部隊に配置された時は、隊長に文書の決済をもらいに行かなければ・・・・なんて思いながら着陸していました。)

 

自身が経験したトラブル

 

事故には至らないまでも、いろいろな経験をしました。

事前に対処したから事故にならなかったとも言えますね!

 

①エンジン計器がおかしい!

 これは、KV-107Aというヘリコプターの訓練を受けている時に起きました。

(これは、僕がこのヘリコプターのラストフライトの時のものです。)f:id:rescueJ:20170505222908j:plain

 飛行訓練では、離陸中のエンジントラブル対処訓練を嫌という程やります。これは、エンジンが二つ以上ある飛行機(双発機)では必須の訓練です。単発(エンジンが一つ)機の場合は、離陸直後にトラブルがあったら、即座に不時着に適した場所へ航空機をコントロールする必要がありますが、双発機の場合は離陸を中止するか、継続したほうが安全かを判断する必要があります。

 なので、訓練で離陸する際に、教官が絶妙なタイミングで片方のエンジン出力をアイドルまで絞って、模擬のエンジン故障対処訓練をよくやるんですね。

 いつ絞られるかわからないので、離陸中は本当にエンジン計器をよくチェックしながら上昇していく癖がつくんですね。これは、とても良い癖になります。

 エンジントラブルは初動対処がとても重要です。

 計器に異常を認めたらすぐに次のアクションを取る必要があるからです。

 

で、その日もいつも通り訓練に臨み、離陸しました。そして、離陸上昇中(300ftくらい?)に、片方のエンジン出力(厳密にいうとトルク計)が急激に減少していきました。

 この時は、名古屋飛行場の東側にある航空自衛隊ヘリスポットから、西側の訓練エリアに向かう予定でしたので、離陸上昇中に滑走路上空を横断していきました。

 エンジントラブルがあったのは、ちょうどその滑走路の真上を飛行中。

 教官は、俺のことを試してるんだな。離陸途中に模擬トラブルを起こして、前方の滑走路に着陸する判断ができるかどうかを見てるんだな。(ここまで2秒くらい)

 「single engien failure ! 前方の滑走路に着陸します」

と言い、着陸操作をしたところ、教官は「はっ?」という顔をしているではないですか・・・・

 状況をつかんだ教官が、すぐさまコントロールをとり、滑走路ではなく自衛隊側の勇往路上にあるヘリスポットに着陸させました。

 

 実は、教官の模擬エンジン故障訓練ではなく、実際の故障でした。

教官よりも早く故障に気づき、対処を取れたことで、この時訓練は中止になりましたが、自分の評価は上がったので良かったです!

 

②操縦桿がおかしい!

 

 今度も、同じヘリでの訓練ですが、飛行時間も1000時間弱の頃でした。

操縦にも訓練にも慣れてきた頃でしたが、未だ恐ろしい先輩パイロットがたくさんいた時代です。

 

 この時は、離陸して1000ft(300m)で水平飛行に移り、加速中に置きました。

 

「あれ?操縦桿の位置が変・・・・」

 

飛行機は、加速する時に操縦桿をどんどん前の方に倒していくんです。

ヘリコプターも、飛行機と同じような感覚で操縦できるように、同じく加速していくと操縦桿を前方に倒していきます。

 

でも、この時は、加速していこうとすると操縦桿を後方(手前)に引かなければいけなくなっていました。

 

あれ、あれ・・・と、思っていたら、先輩パイロットに操縦桿を取られて、

「なんかおかしくないか?」と言われ、

「はい、おかしいです・・・・」と答えたところ、

「おかしかったら、どうするんだ!!」と、先輩の雷が落ちました^^;

 

先輩が仕掛けた、模擬故障訓練の状況だったんですね。

先ほど説明した、ヘリコプターも飛行機と同じような感覚で操縦できる、という機能を持つ装置のサーキットブレーカー(電源)を抜かれていたんです。

 

 今でこそ、フライトシミュレーターがあるのでこういった訓練は、実機を使わないでやるんですが、大先輩がたは実機を使った模擬訓練を経験してこられてかたばかり。ある先輩は、実際にエンジンに燃料を供給するバルブのスイッチを本当にオフにされて、飛行中にエンジンが停止するという状況をさせていました。今の時代では、管理面でそこまでやるなと言われそうな訓練を平気でやっていましたね。

 おかげさまで、良い訓練ができました。

 

 

③鳥が進路妨害

 

 これは、僕が飛行機の免許をとる時の最終試験でのフライトで起きたことです。

飛行機の免許をとる時には、ヘリと同様に離陸途中のエンジントラブル対処を訓練します。

 ただ、この時はエンジントラブルではなく、離陸する滑走路前方を鳥が飛んでいこうとしているという状況でした。

 離陸を継続するか否かは、滑走路の長さに応じた、離陸決定(決心)速度というもので判断します。いわゆる、V1という速度ですね。

 この速度よりも、早い速度で離陸を中断した場合安全に滑走路内で停止できないのです。オーバーランしてしまい、下手をすると擱坐して機体も大破、火災の可能性もあります。

 

 ですので、離陸をするか否かを早急に決断しなければいけません。


 でも、この時頭をよぎるのが、「最終検定」ということ。

鳥とあらる可能性は少ないだろう、と思って離陸を継続するのが訓練生の思考パターン。離陸を辞めたら、自分の飛行計画が狂うからそのまま行っちゃえー!

 と、思ったのですが、


 結果は、離陸は中断しました。そして、減速操作をしてから再度離陸位置まで戻り、再度離陸操作を開始です。

 

不測事態に対応するための徹底的な訓練

 

 今回、3つの事例を紹介しましたが、どれもこれも後から考えると大したことはないのですが、一つ間違えれば大惨事に繋がります。

 

 アメリカで起きた事故は、エンジンが一つしかない飛行機で、離陸直後にエンジンが停止した模様です。

 このとき、パイロットがどのように判断してこの道路上に着陸を決心したかまではわかりませんが、おそらく安全に降りれる場所がそこしかないと判断したんでしょう。

 

 僕が、初めて乗った飛行機もエンジンが一つしかありませんでしたから、離陸直後にエンジンが止まったらどこに不時着させるかを詳細な地図を使って、同期生と一緒に研究しました。備えあれば、とっさに判断ができるものです。

 

心理の面から

 

 とっさの判断をするには、どんな状況にも冷静に判断できる精神力が必要になります。この精神力、僕たちは地上において相当鍛えてきました。

 意外と知られていないんですが、高校卒業後に航空自衛隊パイロットになれるコース(航空学生)というものがあり、そこで2年間の地上訓練を受けるんです。飛行機に乗らない、飛行機に関係ない、地上の訓練です。ちなみに、以前、航空学生について書いた記事を貼り付けておきます。

 

www.orekoko.com

 

この2年間、相当過酷な状況に追い込まれて訓練します。特に、1年目は、先任期と呼ばれる先輩が後輩を指導してくれるので、24時間気を休めることができませんでした。

 

体が心を作る

 

精神的には、先輩の指導でかなり鍛えられるんですが、実は強い心はそれだけで作られたわけではないんです。

それは、極限まで追い込んだ体力作りによって作られていくんですね。

 

ひたすら走る、泳ぐ、銃を持って走る、チームで走る、チームで泳ぐ、などなど自分だけではなく、皆で乗り越えなければいけないことが多くありました。

 

そんな時に、ジャージの下に着ていたのが、このTシャツです。

 

 

f:id:rescueJ:20170505211910j:plain

なんと、このTシャツ、24年前に購入して着ていたものなんです。未だ現役です!
当時の日本製のTシャツは丈夫だったんですね。

このTシャツを着て、基地1周の駆け足(ランニング)に励んでいたことを思い出します。

 

実際のフライトトレーニング・・・の前に

 

話が逸れましたが、いろいろなトレーニングで精神力を鍛え、何があっても動じない心でフライトに臨みますが、パイロットの訓練で一番重要だと思うのが、

 

「イメージフライト」です!

 

このイメージフライト、何をするかというと実際にフライト訓練をする内容を前の日に一度イメージするんです。

 

朝起きてから何を準備するか、

教官には今日のフライトの説明と注意点などをブリーフィングし、

パラシュートなどの装具をつけ、

離陸前の飛行機の最終点検をして、

飛行機に乗り込み、

管制官に離陸許可をもらい、

離陸後に訓練エリアに向かい地形をチェックし、

予報されている天気でどんな雲があるかを想像した上で訓練を組み立て、

うまくいかない時のリカバリー方法を確認し、

全ての訓練項目を終えて飛行場に帰り、

着陸訓練を何回も繰り返して、

安全に着陸、駐機場まで帰りエンジンを停止させる。

 

簡単に書くと、こんなことを実際に飛んでいるかのようにイメージのみで訓練するんです。詳細にやればやるほど、効果があります。

この訓練のミソは、すべてがうまくいくまで、何回も繰り返すことです。

イメージで上手くいかないものが、上空で上手くいくはずがないから、地上で徹底的に訓練します。

 

実際のフライトでは

 

地上で準備して訓練したイメージフライト通りに飛ぶだけです。

変化するのは、

教官の怒る(指導)タイミング、

実際の天候、風向風速

感覚とイメージの差です。

これらを実際のフライトでは、その場その場で修正し対応していきます。

ですが、自分がイメージできていないようなトラブル対処訓練をいきなり教官からやらされたらうまく対応できないことが多くあります。

 

まとめ

 

今回、アメリカの航空事故ではとっさの判断で死亡者が出ない対応が取れたと思います。

この判断は、一朝一夕には身につかないもので、日頃の訓練の賜物で身につくものです。

特に最悪な状況であった、離陸直後のエンジン停止に対処する方法は日頃から意識しておかないと、とっさの対応はできません。

 

このことを地上の仕事に置き換えると、皆さんも応用できることが多いですよ。

仕事における、最悪のケースをイメージする。

そして、そうなった場合にどう対応するかをイメージする。

そうしておくことによって、実際には起きない最悪に備えておくことにより、自信を持って仕事に集中できます。

 

何事も経験、経験できないことは他人の経験を自分に置き換えて擬似体験(イメージ)するだけでも、自分の対応力が向上します。

 

最悪に備えて、実際は楽しく実行する。

 

強い心、それは何事にも動じないのではなく、事前のイメージで様々な失敗を経験すること、そして、最終的には成功したイメージのみを心に焼き付けて日々の生活を送る。

これが、人生をうまく生きるコツです。