自分のやりたいことができるようになる 折れない心コーチング ーrescueJ’s blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。

折れない心 心理編 ヘリコプターパイロットの経験(長野県消防防災ヘリ墜落で思うこと)

空自元レスキューパイロットが折れない心についてお伝えしています。

今日は、長野県消防防災航空隊で起きた悲し事故から数日たち、思うところを書き連ねます。

 

 事故の原因究明

報道ベースでしか情報を取れないので、正直な所事故の原因を知るすべもありません。

 

そんな中、新聞やネット情報の見出しに、「事故の原因究明」という文字が飛び込んでくるので、そのことについて少しお話しします。

 

誰のための原因究明なのか

事故の原因究明という文字を読んだ時に、皆さんならどういったことを頭に思い浮かべますか?

 

おそらく、その人それぞれで持つ経験から、事故原因に対する考え方が違うと思います。

 

長野県は、当該事故を起こした当事者ですので、当事者目線で今後の再発防止策を、住民に対して示さなければならない、と考えるかもしれません。

 

警察は、もちろん県の職員という立場ですが、事件性がなかったかという立場にたつと思います。

 

ご遺族の方は、なぜ事故が起きたかを明らかにして、自分たちの愛した人たちへの気持ちを整理したいかもしれません。また、同様な事故が起きて、自分たちと同じ思いをさせたくないので再発防止を願うと思います。

 

そして、同業者であるレスキューパイロットは、パイロット自身の技術面やクルーとの連携がどうなっていたのかをはっきりさせたいと考えるかもしれません。

 

あくまで、自分の想像で書いてます。

 

言いたかったのは、情報源が一緒でも、その情報を得た人の「捉え方次第」で情報の解釈、価値が変わってしまうということです。

刑法:業務上過失致死傷罪

先ほどの、警察がどう見るかという点でお話ししましたが、警察はその業務上、刑法に則った捜査をしなければなりません。

 

ですので、現場検証や当該事故を起こした機関への聞き込みなどが行われるでしょう。

 

そして、航空専門家ではないので、得た情報を航空専門家への意見聴取をしたり、事故調査委員会発表の資料も使用するかもしれません。

 

こればかりは、私も航空事故の当該者から聞いただけですので、実際の捜査がどのようになっているのかわかりません。

 

でも、一つ言えるのが、関係者の皆さんが真実を追求し、事故再発のために努力した結果、それを検察が利用し、ある特定の個人の刑事罰を訴求することに繋がることを恐れます。

 

自分は裁判を経験したことがありません。

 

でも、裁判によってある人の人生が大きく変わってしまったことは知っていますし、そういう人と一緒に勤務をしたこともあります。

 

空を飛ぶ世界に戻ってこれたにしても、その代償は大きいものです。

 

今回の長野県消防防災航空隊の事故では、生還者がいなかったので当該パイロットなどはそのような思いはしなくて済むと思いますが、残された人の気持ちを考えると、同様なことがあるかもしれません。

 

亡くなった上に、業務上の過失があったと認定されたら、心が穏やかではないと思います。

 

 

国土交通省航空・鉄道事故調査委員会

 

先ほど、事故調査委員会と言いましたが、国土交通省に設置されているものです。

 

これは、1971年に自衛隊戦闘機に全日空機が接触し両機とも墜落した事故以降、その事故教訓から設置されたもので、当初は航空事故調査委員会だったものが、列車事故も扱うようになり、航空・鉄道事故調査委員会となったものです。

 

自衛隊にも航空事故調査を行う部隊があり、その事故の教訓収集、原因究明を行なっています。

 

どちらの機関の調査委員会や部隊にしても、事故調査の権限は警察・検察にあるのが共通した力の弱さというものがあります。

 

この委員会では、事故に対して過失があったとなどという権限はなく、事故に至るまでの背景、当日の状況(人、環境)を調べ、事故に至るまでの過程を丹念に調べ、最終的に事故の主要因、副次的な要因を以後の再発防止のためにまとめることが主任務となります。

 

ジレンマ

事故調査委員会は、真相究明のために努力するのですが、その得た資料を元に警察・検察が誰かの過失を立証する資料にもなりかねない。

 

もし、私が今回の事故機パイロットと親交があった場合、故人の名誉を汚すことに繋がる発言はしたくありません。

 

真に事故の原因をパイロット仲間で話し合うときは、個人の名誉とかは関係なく、いちパイロットとしての判断ミスがなかったか、クルーとの連携はどうやっていたのか、なぜ墜落に至ったのか、など多方面で検討します。

 

情報の裏側、表側というのは、このように出来上がっていくものです。

 

 

ヘリコプターの低空飛行

今回、事故機は訓練へ向かっている最中(開始直前?)と聞いています。

マスコミ報道を見ていると、なぜ事故が起きたか不思議である、というようなことも言っていますが、私から言わせると、

 

いつ事故が起きてもおかしくない環境で訓練しているんだよ!

 

と大きな声で言いたい。

 

もちろん、自ら危ないことをやっているのではなく、災害救助の場面とは、完全に安全な場面だけではないということです。

 

その中で、最も安全に実施できる方法を考えるのがプロのパイロットです。

 

そして、その能力をどこで培うかというと、訓練、なんです。

 

パトカーに例えると、パトカーの運転手は警察官です。

犯罪者を捉えるための運転技術は、事故を起こしてはいけないから教習センターなどで練習していて、本番に備えています。なんて、言わないですよね。

 

普段の道路交通状況の中で、自分の運転技術を高めていざ本番である事件に備えるわけです。

(もちろん特別講習などで訓練されていると思いますよ。この辺り知識がないので嘘を言っていたらすいません。)

 

話を戻して、空の話です。

 

訓練だからと言って、普段から民家の上で救助訓練をされたり、登山客がいるすぐ横で救出訓練が始まったら、誰かに危害を及ぼすことになりますよね。

 

航空法

そこで、空を飛ぶ人のために、航空法というものがあります。

 

この法律、昭和29年に定められたもので、その都度改定されています。

 

その中に、航空機が飛ぶときに守らなくてはいけない、最低高度というものが書かれています。

 

これは、安全を確保する上で必要な最低高度という意味で規定されています。

 

航空法には、細部まで規定されている、航空法施工規則というものがあります。

 

今回は、その部分を抜粋して記載しました。

 

最低安全高度

 

(最低安全高度)
第百七十四条  法第八十一条 の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。
一  有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度
ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度
ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度
二  計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高度

 

知らない人が見たら、よくわからないと思いますので少し解説します。

1 大前提、陸上部でも洋上部でも人や家屋に危険を及ぼしてはいけません。

(高速で飛行する戦闘機が衝撃波で起こす影響は別の規則で安全を確保していますので、この規則には当てはまりません。)

 

 

2 人や家屋が密集しているかどうかの判断は、この条文でははっきりとしていませんが、山中にある一軒家と市街地にある住宅街をイメージするとその違いがわかると思います。

  簡単に考えると、通常の住宅密集地などでは、そんなに高い建物がないので約300メートル(1000フィート)以上を飛行します。

  それが、高いビルなどが多くあるところを飛行するときは、そのビルの高さから300メートルの高さを飛ばなくてはいけないので、東京都心では少し複雑です。

わかりやすい図を使った説明をしている人がいたので参考にさせてもらいましょう。

hamapro.blog.so-net.ne.jp

ヘリコプターが離着陸するときは、この最低安全高度以下に降りていく必要がありますので、都心であったもビルの近くを飛ぶことがありますので、勘違いしないでください。

 

最低安全高度というものがあったら、災害救助現場を想定した訓練ができないですよね?

 

その時のために、現場パイロットは最低安全高度以下の飛行を国土交通省管轄の航空局または空港事務所に提出して、その許可を持って訓練をしているんです。

 

元職場では、サイアン(最低安全高度の最・安をもじった略)と呼んでましたが、一般的には81条(航空法で第81条が最低安全高度)とか言っているのを聞いたことがあります。

 

以下にその許可をもらうときに必要な規則を抜粋しています。

低空飛行の許可

(最低安全高度の飛行の許可)
第百七十五条  法第八十一条 但書の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一  氏名及び住所
二  航空機の型式並びに航空機の国籍及び登録記号
三  飛行計画の概要(飛行の目的、日時、径路及び高度を明記すること。)
四  最低安全高度以下の高度で飛行する理由
五  操縦者の氏名及び資格
六  同乗者の氏名及び同乗の目的
七  その他参考となる事項

 

業務の分担により、国土交通大臣の代理が航空局と空港事務所に割り振るされています。

簡単に分けると、

 

空港事務所:日中、飛行機が少し低い高度で捜索のための訓練をするとき

 

航空局:人や物をつり下げたりするとき(ヘリの救助訓練や物資運搬)や夜間での抵抗度飛行

 

ですので、元職場でこの業務をよくやっていたので両方へ申請書類を提出してました。

 

今回の事故は、訓練中でしたのでおそらくこの申請を出していると思いますが、報道上う方では、どの区域で申請されているかがわからないです。

 

さらに深く考えて見ましょう。

 

事故が起きた時は、許可申請が間に合うの?

実際に災害や行方不明者を救助するときは、この申請を出した後に飛行しているの?

 

そうですよね、そう考えるかもしれません。

 

でも、そんなことをしていたら人命を救うことはできないです。

 

東日本大震災では、数え切れないほどのヘリコプターが救助活動していましたから、そんな申請をするのも大変ですし、申請を受け付ける側も審査できないですよね。

 

そのために、次のような条文が法律で規定されています。

 

(捜索又は救助のための特例)

第百七十六条  法第八十一条の二 の国土交通省令で定める航空機は、次のとおりとする。
一  国土交通省防衛省警察庁都道府県警察又は地方公共団体の消防機関の使用する航空機であつて捜索又は救助を任務とするもの
二  前号に掲げる機関の依頼又は通報により捜索又は救助を行なう航空機
三  救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法 (平成十九年法律第百三号)第五条第一項 に規定する病院の使用する救急医療用ヘリコプター(同法第二条 に規定する救急医療用ヘリコプターをいう。)であつて救助を業務とするもの

 

 

 

つまり、事前に国などの期間で捜索・救助する航空機は、実際の任務では何も考えずに救助活動ができるようになっています。

 

民間機を持っている人が救助をしたい!というときは、この法律では除外されません。

 

もともとこの法律ができた頃には、そんな人たちがいなかったから盛り込まれていないだけかもしれません。

 

私は将来的に、自分で山岳救助ヘリを運行する会社を運営したいなという夢があります。

 

そのときは、空自のOBがその能力を発揮してくれると思います。あとは、資金の問題・・・・

 

 まとめ

今回、事故に対する捉え方は、その立場によって大きく変わるということを初めにお伝えしました。

 

それを踏まえて、低高度での訓練をするにあたりどのような許可だ必要であるのかを考えて見ました。

 

全てのプロパイロットはこの規則を知った上で訓練していますので、法的には問題ない状態で日頃の訓練を行なっていると思います。

 

ただし、規則に精通している人と、そうではない人がいるので、その解釈に齟齬が出るかもしれません。

 

ましてや、報道で流れる情報は、情報元がはっきりしないので信ぴょう性があるのかないのかもわかりません。

 

そんなに低高度に降りなくても、ホイスト(救助するウィンチ)があるから高いところで救助すればいいんじゃないの?と思うかもしれません。

 

でも、高い高度で救助したときに、救助員と遭難者が機内に収容されるまでのリスクが高まります。ホイストを長くのばしたことにより、大きく揺れる可能性もあります。

 

短時間に救助する、リスクを少なくするために、自分の機体をギリギリのところまで下ろす。これは、誰もがやっていること。

 

その中で、事故が起きないように外の監視を行っています。

 

そういった訓練をやっていたと、多くの人には理解して欲しいです。

 

そのことが、現場で働く人のやる気につながり、困難な状況にも折れない心を保てる一つのリソースになるのです。