折れない心 ーrescue J guy's blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。また、航空関連ニュースに対しての個人的な感想や意見もアップしています。

群馬県 ヘリ墜落 東邦航空 パイロット視点での現在時点での墜落原因推測

平成29年11月8日午後2時半ごろ、東邦航空(本社東京)のヘリコプターが群馬県上野村に墜落しました。

 

まず初めに、事故でお亡くなりになった4名の方のご冥福をお祈りします。

 

9日(朝)現在でのネットで拾えた情報を集めましたので参考にしてください。

 

 

ネットの情報

 

時事通信

www.jiji.com

 

www.jiji.com

朝日新聞

www.asahi.com

 

産経新聞

www.sankei.com

news.livedoor.com

 

マスコミ報道から得た情報から

 

夕方のテレビニュース報道で今回の事故を知り、その後21時のNHKニュース、22時の朝日テレビニュースを見比べて情報がどのように伝えられるかを見ていました。

 

夕方のニュースで事故を知った時は、あまり情報が多くなかったので当該ヘリが群馬県上野村に何か仕事があり、その飛行中に墜落したと思っていました。

 

その後の報道で当該ヘリの行程がわかりました。

 

墜落したヘリコプターの行程

NHKニュースから引用します。

東邦航空によりますと、墜落したヘリコプターは8日午前8時31分に長野県松本市松本空港を離陸し、午前9時から11時10分まで長野県の美ヶ原で送電線の工事に使う資材などの輸送を合わせて20回行ったということです。

その後、山梨県早川町新倉に移動し、午後0時20分から1時45分まで同じく送電線の工事に使う小型のパワーショベルなどの輸送を合わせて3回行って作業を終えました。

その後、格納庫がある栃木県に戻るため午後2時3分に早川町のヘリポートを離陸したということで、ヘリコプターは、栃木までの飛行中に墜落したと見られます。

東邦航空でヘリコプターの機長を務める佐藤宏文さんは「ヘリコプターの事故は、物資輸送などの作業中に多く、今回のような移動中の事故は非常に珍しい。天候はよかったので、機体か、人為的な問題ではないかと思う。北川機長とは入社も近く非常につらいです」と話していました。

 

 このように、墜落したのは作業を終え山梨県から栃木県に向かっている時だとわかりました。

 

地図上で確認しても、概ね直線経路上に墜落した場所があります。

 

墜落した原因で有力な推測

地元住民の方の多くの証言がありましたが、この証言がパイロットとしてはこのヘリコプターになんらかのトラブルが発生した、または発生する予兆があった(警報の点灯)と確信しました。

 

NHKニュースによる証言内容

消防によりますと、現場近くの広場にいた男性は「西から東の方向にヘリコプターが来たと思ったらUターンし、西の方向に向かい始めたところで高度が落ちた。そして機体の後ろの部品が飛び散るように見え、その後、回転しながら落ちた」と話しているということです。

 

 

ヘリコプターが直ちに着陸しないと墜落する時

 

トランスミッションの故障

これはエンジンの出力をローターにつなげるトランスミッション(駆動軸)がその機能を失うことです。

 

ヘリコプターにとっては、致命的な故障です。

 

飛行機であればエンジンの故障が致命的になるかもしれませんが、ヘリコプターの場合はこのトランスミッションが致命的な故障になります。

 

ですので、トランスミッションが故障する予兆が感じられるように、警報灯が取り付けられており、この警報灯が点灯した場合は速やかに着陸することが求められます。

 

もちろん警報灯の誤信号の可能性もあります。

 

ただ、2次的兆候があった時は迷うことなくすぐに着陸です。

2次的兆候というのは、例えば機体の振動、異音、異臭などが考えられます。

 

墜落したヘリに何が起きたか

 

僕は、今回の目撃情報とパイロットがベテランであったことから、事故に至った経緯を次のように推測しています。

 

1 飛行するのに重大な影響がある警報灯の点灯(おそらくトランスミッション

2 目的地までの飛行は危険と判断

3 すぐに着陸できるところを選定

4 旋回して着陸場を確認しながら、すぐに着陸できるように高度を下ろす

5 着陸経路上にあった送電線(もしくは索道)にローターが当たる

6 ローターへの急激な抵抗により、テール部分がその負荷に耐えられなくなりテール折損

7 機体はメインローターの反トルクにより回転しながら落下

 

(11月9日21:00追記)

テレビ報道から目撃情報がさらに増え、事故に至った経緯が少しづつわかってきました。僕なりの新しい推測です。

1 テールギアボックスのチップディテクターのコーションライトが点灯

2 1ほぼ同時に振動、機体後部からの煙、異音が発生したため、機長は緊急着陸を決心

3 着陸するために風に正対する方向に向けつつ、着陸敵地に向けて高度を急激に下ろす。(一刻の猶予もないため)

※この状況を見た住人がいつも見ない低高度で飛行していたと推測

4 着陸適地(おそらく河川敷か民家のない道路上)を見つけ継続して降下

5−1 着陸進入中に送電線または斜面の気にメインローターが当たり、テール部分が破断、テールは河川敷に脱落し、機体は回転しながら落下

5−2 着陸進入中にテールギアが破断しテール部分が脱落、機体は回転芝がら落下し送電線に接触、切断し墜落

 

目撃情報を聞くと5−2のような気がします。

 

確証となる動画

Youtubeでローターが何かに接触した時に何が起きるか。参考となる映像を見つけました。

10:00のところでヘリコプターの2機編隊が飛行してきます。

そして、2機のローターが接触したのち、テール部分が折損して墜落する様子が映っています。

 

15:00頃からの映像では、後方ローターのトランスミッションが故障した時のテール部分の破断する様子を写しています。

www.youtube.com

 

不確かなこと

 

ここまで推測してきましたが、確証が得られないのが

1 送電線(索道)に接触したから墜落したのか、

2 他の原因で墜落した機体が送電線を切った

のどちらかなのかということです。

 

目撃情報からは1の状況であると思いますがなんとも言えません。

(11月9日21:00追記) 

新目撃情報ですと墜落した結果送電線を切った可能性が高いです。

送電線は本当に怖い

仮に着陸するための経路上で送電線に引っかかったとしましょう。

でも、知らない人からすればなんでよけれなかったの?と思うかもしれません。

 

でも、僕は正直いうと送電線は

 

そこにあると分かっていれば避けられる。

でも予想しなかったところにあると避けられない。

 

と思っています。

 

例えが悪いのですが、蜘蛛の巣を思い浮かべてください。

 

蜘蛛の巣があるところはわかりやすので、避けて通ることができると思います。

 

でも、蜘蛛の巣ではなく、蜘蛛の糸だけが目の前にあった時に気づける人がどれだけいるでしょうか。

 

僕はしょっちゅうう蜘蛛の糸に引っかかります。

 

未知の場所に着陸

これは、かなりリスクを伴います。

 

それでも、いつ故障して墜落する恐れがある状態で飛行し続けるよりも、このリスクを取ってでも着陸した方が安全です。

 

未知の場所に着陸する時には、その前に着陸する場所を確認(偵察)することが必須です。

 

ただ、今回のように速やかに着陸しないといけない場合は、悠長に確認できないこともあります。

 

終わりに

今回、空自浜松救難隊のUH-60J墜落事故に引き続気発生した事故。

 

関係者はもちろんのこと、パイロットとしては心痛みます。

 

誰も事故を起こしたくて飛んでいるわけではないです。

 

緊急時の対処訓練も行なっています。

 

ただ、訓練をしていたから必ず事故は起きないかというと、そうでもないのが実際のところです。

 

事故の連鎖を止めるために、安全に対する意識を持ち続けなければいけないと強く感じました。

 

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8月26日に墜落した海自ヘリが海底で発見・・・・。空自ヘリは未だFDRが見つからない。

 

海自ヘリ海底で発見

 

8月26日午後11時過ぎに青森沖で墜落した、海上自衛隊SHー60Jが周辺海域の海底2600mで発見されたと報じられました。

 

www.asahi.com

 

行方が分からなかった隊員3名も機体の中で発見されたとのことです。

10月25日以降に海底から引き上げる方針とのことで、ようやく寒い海の中から帰ってこられると思うと、良かったと思います。

 

反面、事故で悲しんだ関係者の方々の気持ちを考えると、事故で死んではいけないって再度思いを新たにしました。

 

「事故はなくすことはできない」

前回のブログでも書きましたが、これは事故で死んでもしょうがないと行っているわけではないんです。

 

何考えているかというと、

 

大きな事故(乗員死亡) → 小さな事故(乗員は無事)

 

ということなんです。

 

逆を言うと、小さな事故が多くなると、それは大きな事故に繋がって行くと言うことです。

 

小さな事故をより小さくすること、さらに言うと「ヒヤリとしたね」と言う事例(インシデント)に落とし込む。

 

そして、そのインシデントを多くの関係者が共有して、その事故の芽を摘む。

 

こう言う地道な活動が必要なんですね。

 

今回、墜落時にFDR(Flight Data Recorder)が見つかり、海面に墜落した時の機体の状況とコックピットの音声、そして生存した1名の隊員の証言から、事故原因が操縦ミスとわかりました。

 

もちろん、機体の不具合があってその対処をしていたのですが、

この事故原因をただの報告書に収めるだけではなく、

事故につながる要因を事故にならないようにするためにはどうするか、これを真剣に考えなければならないです。

 

空自ヘリの行方

10月17日に浜松沖に墜落した空自ヘリについては、10月23日は台風の影響により一時捜索が中断していましたが、未だ陸自ヘリの応援も受けて捜索中です。

 

ニュース報道によれば、海上自衛隊の艦艇のソナーで海中に物体を感知しており、海自ヘリと同様に海底に沈んでいる可能性があります。

 

青森沖よりも海水温が高いとはいえ、もし乗員が海底の機体に閉じ込められているとするならば、早く帰ってきてほしいです。

 

そして、海自の事故では見つかっているFDR。

 

空自の事故では未だに発見できていません。

 

水没と同時に機体から分離されるはずのFDRは、事故原因の究明には欠くことはできないものです。

 

今回、なぜFDRが機体から離れて海面に浮上しなかったのか、いろいろなところで疑問が出ていると思います。

 

こればかりは、機体を引き上げてもその原因がわからないかもしれません。

 

ひょとしたら、機体からは分離しているものの、損壊しているため浮力を得られずに海中をさまよっている可能性もあると思います。

 

おそらく初めてのことだと思うので、自衛隊関係者も含めて推測でしかありません。

 

機体と一緒に海底にあったとしたら、おそらく海面に接触した時の衝撃で分離システム自体が何かの不具合を起こした可能性もあります。

 

いずれにしろ、機体からの分離ができないことが機械的な不具合だとしたとしても、後々対処すればいいですが、事故原因が解明される方が先決です。

 

最後に

私が救難隊パイロットとして初めて赴任した時、任務資格を得るための検定試験で隊長に言われたことがあります。

 

それは、

 

「操縦の上手いパイロットはいらない。安心して無事に送り出せるパイロットになれ。」

 

です。

 

パイロットは周りから見ると、とても華やかなかっこいいと思われる仕事かもしれませんが、自衛隊においてはそんなことはありません。

 

現役で飛ばれている自衛隊パイロットの方々を含め、無事に家に帰ってきて欲しい、そう思うのです。

 

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空自救難ヘリの事故について思うこと

先日投稿した記事を多くの方に読んでいただき、救難隊がいかに過酷な訓練をしているかを理解する一助になれば嬉しいです。

 

現在(平成29年10月19日(木)16:00)のところ、乗員は以前行方不明で関係機関の必死の捜索活動が続けられているところです。

 

前回の記事では、マスコミ報道からではわからないことがあると書きましたが、報道資料を元に記事を書いているので致し方ないかと思います。

 

www.orekoko.com

 

まずは、マスコミ報道の元になっている、航空幕僚監部の報道資料URLを貼り付けておきます。

第1報

http://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H29/291017_01.pdf

第2報

http://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H29/291017_02.pdf

第3報

http://www.mod.go.jp/asdf/news/houdou/H29/291018_03.pdf

 

今回も、現職でない自分が何ができるかを考えて、少しでも多くの方に救難隊のこと、そして航空自衛隊の行なっていることを少しでも理解する手助けができればと思い、拙い文章ですが書き連ねていきたいと思います。

 

 

救難隊が過酷な状況で訓練する意義

 

他機関ではやらない厳しい訓練を自らに課しているのか。

それは、いついかなる場所にも救助に行く、と言う安心を与えるためにです。

 

誰のために?

 

それは、日本の国防の最先端である、戦闘機パイロットのためです。

戦闘機パイロットは、平時から対領空侵犯措置という任務を行なっていて、飛行場が飛べない状態(気象状況、滑走路閉鎖)ではない限り、我が国の領空に侵入してくる恐れのある航空機などに対して必要な行動をとっています。24時間、365日休むことはありません。

 

そんな彼らが、敵か味方か分からない不明機から攻撃を受け、または航空機の不具合で脱出した時に、必ず助けに来る「救難隊」の存在は何よりのカンフル剤です。

何もない大海原で漂流して、生き抜こう、生きて仲間や家族の元に帰る!その思いを強くしてくれる存在、それが救難隊なんです。

 

これが、有事になればその重要度は格段に上がります。

 

ですので、救難隊が日々、他機関では成し得ない訓練を陸上部、洋上部で行なっているのは、ひとえにこの為です。

 

この結果、災害時などにはこの能力を活かし、他の機関が二の足を踏む状況でも救助活動に投入される所以です。

 

彼らが、昼夜問わず訓練をしているのを戦闘機パイロットはいつも見ています。そして、救難隊の存在に感謝をしつつ、防空任務に就くための厳しい訓練を日々行なっています。

 

救難隊が行なっていることは、確かに人命救助のための活動ですが、最終的には国防につながる大事なことをやっているんですね。

 

 

 

事故の原因について

 

現在、乗員が見つかっていません。また、航空機の飛行諸元などを記録するFDRも発見されていません。

(※FDRは下の写真を参照)

 

www.orekoko.com

 

 

過去にも自衛隊機の事故が起きた時に記事を書きましたが、事故原因を究明することはとても大事なことです。

 

ただ、日本においては航空機事故に限らず、何か事故や事件が起きたらその犯人探しを一生懸命する習性があります。

 

運用上のミスがあれば、運用者が

操縦ミスがあれば、パイロットが

機体の整備不良があれば、整備員が

機体そのものに不具合があれば、航空機製造メーカーが

 

 

何にしても、最終的には誰かの責任にたどり着くことになります。

責任を取るべき人が、責任をとり、その事故原因や副因がはっきりとした中で対策が取られればいいのですが、ここが一番難しいところ。

 

航空機事故が裁判になった時に、この事故原因が利用されるのです。自衛隊機でも、民間機でも事故調査委員会が事故調査を行い、その内容を発表します。

 これについては、前回書いた記事を参考にしてください。

 

www.orekoko.com

  

 

事故で人員の死傷を伴うことは、非常に辛いものです。

ですので、事故原因に対して有効な対策を取ることが一番の弔いです。

 

ただ、自衛隊の存在そのものが、日本を取り巻く環境が安全ではないとき、国民の代表としてその任務に就くことです。

 

有事を想定して、危険なことを承知で訓練していますが、現実的に模擬できない状況があれば実機を使った訓練は行いません。

 

実機では、模擬できる範囲内で困難な状態を想定して訓練をしています。

 

その想定をする上で、日々の訓練が安全にできるように規定を設けて、厳正に訓練が行われています。

 

 

事故をゼロにできるのか

僕は、事故を0にできるとは思っていません。

戦争がなくなるとも思っていません。

これは、諦めているのではなく、事実として受け止めているからです。

その上で、限りなく事故が0になるように、戦争にならないように、自分に何ができるかを考えることの方が重要だと思っています。

 

何かにつけて、理想を語る方が多いのですが、いつも思うことがあります。

その人たちは、当事者意識がないのです。

飛行場周辺住民では、事故が起きて怖い思いをされている方もいると思います。

もし、息子さんがパイロットだったら同じ思いをされますか?

旦那さんがパイロットだったら、事故をなくせ!なんて言えますか?

 

戦争についてもそうです。

国民の代表で多数政党が与党となり、その与党が中心となり日本の国政を担っていくのですが、野党でいる限りその責任はなく、口先ばかりのことを言います。

自衛官が戦争をしたくて自衛隊に入ったと思っている人がいたら、大きな勘違いです。

 

中には、ミリタリー好きな人もいて誤解を与えるかもしれませんが、根っこにあるのは、国民のために戦うという思いです。

 

 

終わりに

偉そうなことを書き連ねましたが、今の私も部外者であり当事者ではありません。

部外者なので、当事者の辛さも分からなければ、今回の事故の背景に何があったかも知りません。

でも、自分にできることは、救難隊のことを知ってもらう手助けをすること。

そして、救難隊がこの事故を乗り越えて、また元気に飛んでもらうために陰ながら応援することだけです。

 

 

 

 

 

空自ヘリ(浜松救難隊) 夜間洋上救難訓練について知っておいて欲しいこと(私見)

29年10月17日18時頃、航空自衛隊浜松救難隊の救難ヘリコプターが浜松沖で墜落(現時点での状況)し、機体の一部が見つかっているが、乗員4人の行方が分かっていません。

 

当該機の機長は、私の同期生ということもありますが、もともと搭乗していたヘリコプターであり、他人事ではないというのが正直なところです。

 

現時点での事故原因は、限られた情報の中から想像できることはできるのですが、まずは救難隊が夜の訓練でどれだけ困難なことをやっているかということを知って欲しいと思います。

 

www.sankei.com

 

報道の内容からの推測

 

当該ヘリコプターは、17時51分に浜松基地を離陸し、17時57分での管制機関との交信では異常を知らせるものはなかったと報じています。

 

ここで何を話したかは明らかになっていませんが、離陸後6分であれば、海岸線から10kmは離れています。

船などがいなく安全と判断したならば高度を下ろして訓練の準備に入るはずです。

ですので、管制機関には「低高度に降りる」という内容を通報したと推察します。

 

なぜ低高度に降りると通報するかというと、救難訓練を行う高度では浜松基地のレーダーから映らなくなるから、事前に通報することにより管制機関に何をしているかを知ってもらうために行うことが多いです。

 

18時02分にレーダーロストした、と報道でありますがこれは低高度に降りていれば当たり前の話です。

 

訓練機は、訓練海域に到着する前に通常であれば、気象状況を確認しながら飛行し、問題なく訓練ができるかどうかを判断しその旨を通報します。

 

これは、18時02分のレーダーロストの前後で必ず行われている基本事項です。

 

また、訓練を開始する時に、訓練開始の通報も行います。

 

訓練機は、その後最後の通信から30分間隔で異常の有無を部隊に通知します。

この30分間隔の通信が途絶した時に、初めて何かあったかもしれないと部隊は判断します。

 

山中であれば無線が届かなくなる可能性もありますが、今回の場合、基地から30km(約15NM)ですので、無線が通じにくくなる時があっても届かなくなることは少ないです。また、同時に在空している訓練機がいれば、その訓練機から安否の確認を行います。

 

これが、まずマスコミ報道からではわからない訓練時の状況です。

どの時点で低高度に降りたのかは、おそらく把握されていると思いますがレーダーロストすることは今回の訓練では当たり前の話です。

もし、レーダーに映る高度(おそらく300mくらい)を飛行していて、航空機に不具合が発生して墜落したとすれば、その間に何らかの異常を知らせることは必ずやります。

ただ、通常通り、低高度に降りて訓練を開始していたとなれば、高度は500ft以下で洋上にホバリングする以前であれば、200ー300ft(約60ー100m)に降りていることが多いです。

 

もし、この高度で機体に飛行継続が困難なトラブルが発生した場合は、航空機のコントロールをすることだけしかできない可能性があります。100mの世界記録でさえ約9秒です。それ以上の速度で飛行している航空機には残される時間はわずかであることが想像できると思います。

 

夜間の洋上救難訓練

 

夜間飛行は、どの機関でも行われている訓練ですが、洋上ではどのような環境であるかを理解していない人も多いと思いますので、フリー素材の海の写真を見ながら少しだけ説明します。

 

まずは、こんな海を想像できませんか。

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この写真は、海岸線も写っていて海と空の境界線がわかりやすくなっています。

 

次の写真です。

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この写真(イメージ)では、まだ明るいこともあり何となくですが海と空の境界線がわかります。この状態でどんどん暗くなったらどうなるかというと。

 

 

こんな状態です。

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月明かりもなく、街灯りもない、周辺に船もいない海はこんな状態です。

 

こんな中、遭難した船や人を捜索して救助する訓練を行っています。

 

終わりに

 

まだまだ詳しくお話しすればきりがないのですが、今回の訓練内容が夜間暗視装置(NVG)を使用していれば状況は変わってきます。一部報道では、夜間暗視装置を搭載し、とありましたがそれを使った訓練かどうかまではわかりません。

 

細部の状況が明らかになるかどうかわかりませんが、救難隊は日々みなさんの知らないところで過酷な訓練を行っているということを知っておいてください。

 

 

沖縄 米軍ヘリ事故 炎上について思うこと

今回も、思うことを私見で書いていきます。

まずは、ネットで拾った情報を貼り付けます。

www3.nhk.or.jp

www.okinawatimes.co.jp

 

 

 

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事故は無くなるか

 

事故は無くならないです。

それは、事故というカテゴリーは人間が決めているから。

何も問題にならないことは事故と呼ばず、なんかしら私たちの生活に影響を及ぼすことを事故と決めているからです。

 

私たちの影響(自然)として捉えれば、どこに落ちても何かの影響はあるものです。

例えばこんなものも。

headlines.yahoo.co.jp

 

実際に、歴史の中で事故とはその時代の中で起きたことで、永遠の定義では無いからです。

 

 

米軍機の事故

 

米軍は、今回の事故については遺憾とは思っているかもしれませんが、クルーが全員無事だったことを考えたら、大きな問題にはならないと考えていると思います。

 

今回、着陸後に炎上したヘリは海兵隊のヘリコプターです。

海兵隊に所属していたわけでは無いのですが、海兵隊の特徴をいうと、

 

「機材にはお金をかけない。数を揃える。古くても構わない」

 

こんなところです。

 

だから、高級なヘリコプターを大事に扱っている自衛隊に比べると、信じられない状態で日々の訓練と任務に使用しています。

 

ですから、仮に米軍側の整備がいい加減だとしても、彼らからすれば問題のないレベルであるかもしれないですし、機材の老朽化もわかった上での運用だったと思います。

 

繰り返しますが、クルー全員が生存していたことは何よりも、

「よくやった」

と、米軍内では判断されると思います。

 

 

沖縄の立場

 

沖縄の立場からすると、米軍が何をしても反対するし、抗議するというのが最近の流れです。

 

客観的に物事を見るということをあえてせず、沖縄(県知事)の立場のみで情報を発信しています。

 

先ほどのリンクで「ヤンバルクイナの繁殖地・・・」という記事を現地の記事が書くこと自体、物事の本質を見ない良い例だと思います。

 

同じ事故をドクターヘリが同じ場所で起こした場合、どのように記事にされるのでしょうか。言わずともわかると思います。

 

ですので、今回の事故も米軍機の事故に何が問題があった、ということよりも、米軍機が事故を起こした、ということ自体が問題として捉えています。

 

 

物事の捉え方

 

折れない心、レジリエンスで度々お話するんですが、ある事象が起きた時にそれを100人の人が目撃したら、100通りの解釈が発生します。

 

もちろん、似通った解釈をされる方は多くいると思いますが、100パーセント同一ということはほぼありません。

 

これは、その人それぞれが思考の「枠」「捉え方」を持っているからです。

 

産経新聞沖縄タイムスの記事を貼り付けてのは、少なからず記事の切り口が違うからです。

 

切り口が違うこと自体を非難する必要はないと思いますが、これらの記事がどういったバイアスを持っているかということを読者は知っておかなければ、誤った物事の見方をした情報を取り入れてしまうかもしれません。

 

私の捉え方

 

私は、元航空自衛官パイロットでした。米空軍、陸軍との接点もありましたので、彼らがどのようなことを考えているかは、民間の方より肌身に感じていると思います。

 

そして、私は日本が大好きです。できれば、米軍基地が日本にない状態で日本の平和と発展を図りたいとも思っています。

 

でも、今はまだその時期ではありません。

 

今回の事故の結果をみて、安全なところに降りて、しかもクルーが全員助かったのは機長の経験が豊かだったのだろうというところです。

 

 

www.orekoko.com

 

終わりに

 

航空機で発生する火災は恐ろしいもので、あっという間に燃え広がります。

私は、洋上で訓練することが多かったので、航空機でトラブルがあった時にいかにしてクルーの命を守るかということを中心に考えていました。

 

なんとか、クルーだけは航空機から脱出させ、安全なところまで航空機をコントロールして海没させる。その後、なんとか脱出し合流しよう、それだけでした。

 

陸上部においては、洋上とは違いどこに着陸しようと考えながら航空機をコントロールし、状況を管制機関や部隊に伝え、そしてクルーの命をどう生かすかを考えます。

 

ですので、普段の何気ない訓練場所への往復でも、不時着できる場所があるルートを意識して飛行したり、むやみに住宅密集地の上空を飛ばないように心がけていました。

 

守るべき国民を殺そう、危害を与えよう、などと考えて飛んでいる軍人はいません。

米軍人でさえ、自国民ではないですが、日頃から同盟国の国民を殺そうなんて思っていません。

 

航空機事故が起きることに反対されるのではあれば、まずは飛行機に乗らない生活をしてほしいものです。

 

 

 

 

 

陸自LR-2 事故調査結果の公表に関する報道について(私的感想)その2

 はじめに

 

前回の(私的感想)その1に質問が在りました。

コメントでお返事しているのですが、その内容を踏まえて今回のその2を綴っていこうと思います。

 

 

 

なぜ自走装置が切れたことに、クルーが気づかなかったのか

(以下、質問の抜粋)

> 自動操縦が切れ、警報にクルー4人が気づかないとはちょっと信じられないのですが。疑問に感じるのは私だけでしょうか?機長も副操縦士もベテランです。後ろに乗っていたクルーもベテランです。4人揃って警報に気づかないとは、信じ難いとゆうのが率直な意見です。 4人の目、耳があってそのような事態に陥るのか?まして着陸前で、あのような天候で後ろの搭乗員も気を張っていた事と思います。

 

この疑問に関して、自分の経験をもとにお話ししていきます。

 

まず初めに、私はLRー2には登場したことがないので、具体的な警報音やシステムに習熟していないことをお詫びします。

 

 

固定翼機の経験から

 

私は、ヘリコプターに搭乗する前は、固定翼機には搭乗する機会もありました。

また、パイロット候補生では、ビジネスジェット機を操縦していましたので、概要は理解しています。

 

警報について


今回の事故調査報告書を見ることができないのでなんとも言えませんが、ボイスレコーダーに警報音が残っていたと聞いています。


警報音には、おそらくパイロットがその音に気づきホーンカット(警報音の解除)していると思います。

 

うるさいですからね。

 

そうなんです、うるさいんです、警報音というものは。

 

だから気づくはずです。

 

でもここで一番恐ろしことが起きます。それは、

 

音をカットすることを無意識にしてしまうことがあるという事実なんです。

 

これは、今回の搭乗員が無意識にしていたと言っているわけではなく、よく起こることとしてお聞きください。

自分にもその経験があります。

 

航空自衛隊での事例

 

航空自衛隊はほとんどが固定翼航空機です。
ですので、着陸前には必ずギアをおろします。

 

訓練機には、ギアを降さずにパワー(出力)を絞ると警報音がなるシステムのものもありました。

これは、着陸前にエンジン出力を下げた時に

 

「ギアが降りてませんよ」


と教えてくれる、最終的な安全装置の一つです。

 

日本における事例映像先のリンクです。

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外国の小型機での映像がありましたので参考にしてください。

www.youtube.com

 

でも、このシステムがあっても、ノーギアランディングをしてしまう事例はあるんです。

 

なぜかというと、先ほど言った無意識にカットするということ。

(上記のリンク先では、警報音が鳴ったまま着陸してました。)

 

着陸前は色々な操作に加え、管制官との交話、さらにはクルー(教官)との会話が同時に進行している時期でもあるのです。

 

ですので、ギアを降ろそうとしていた時に、他の会話が入ってくるとギアを降ろすことを忘れてしまいます。

 

そして、本人はギアを降したつもりの記憶だけ残っているので、最終進入中に警報音が鳴っても、何で鳴ってるんだろうと思いつつ、着陸操作に専念する為に、半自動的に警報を解除してしまう。

 

または、先ほどのリンクのように

 

「この音は何だろう?」

 

と、疑問に思ったまま着陸してしまうかもしれません。

 

以上のことは、起こりうるだろう、という観点で書きましたので事実とはことんると思います。

 

実は、

実は、航空自衛隊でも訓練生だけではなく、実戦部隊のパイロットでさえノーギアで着陸してしまった事例はあります。

 

警報音だけではなく、視覚でもギアが降りているかどうかを確認する計器もありますし、その計器を確認してから着陸するという手順も決まっています。

 

ですが、先ほども言った通り、パイロットは着陸前に様々なことを同時に処理しています。

 

それは操作だけではなく、任務や次の行動についてもです。

 

ですので、警報音がなっていることはもちろん認識していると思いますが、警報音が鳴ったことへの対応をしているという保証にはならないんですね。

 

ヒューマンエラー

 

これは、確率的に起きているという話ですので、現在飛んでいるパイロットの方で、そんなことはあり得ないという方は多くおられると思います。

 

でも、それでも起きるのがヒューマンエラーなんですね。

 

ヒューマンエラーが起きないように、様々な教育や施策が取られていると思いますが、根絶できてはいません。

 

人が行うことですから。

 

オートパイロットの解除

推測1

今回の事故調査では、オートパイロットを解除したことが事故原因になったという内容だと思います。

(事故調査書を読んでませんので、間違いがあったら教えてください。)

 

これも情報元がネットニュースですので、本当のことかわかりませんが、墜落した時の方位が函館方向への旋回方向と反対であったという記事を見ました。

 

ここから推測できるのは、オートパイロットを誤って、または意図的にOFFにした後、なんらかの要因(管制官との交話など)で、オートパイロットをOFFにしているという認識がなくなり、雲中を緩やかに反対側に旋回しながら、機首が下がっていくことに気づくのが遅れたのかもしれません。

 

推測2

オートパイロットの解除をしたのち、空間識失調に入ったのではないか。

 

空間識失調(バーティゴ)は、対処法は訓練で行なっていますが、ひどい状態になると操縦することは非常に困難になります。

 

オートパイロットがどの時点でOFFになったかわからないのですが、旋回中にOFF になり、その時点で空間識失調に入っていたのであれば、操縦は極めて困難です。

 

でも、今回の事故での可能性は少ないと思います。

 

空間識失調に入った時は、副操縦士に操縦を渡すか、オートパイロットを入れるように訓練しているはずですから。

 

私的結論

やはりなんらかの要因でオートパイロットをOFFにした警報音を無意識にカットして、その後はオートパイロットが入っているものとして認識していたのではないかと想像しています。

 

副次的要因

あとひとつ、直接的な原因ではないとは思いますが、クルーの上下関係です。

 

副操縦士が階級上位の場合、微妙な関係になる場合があります。

 

これは、階級ではなくて、技量レベルで機長を決定せざるを得ない時に発生する権威勾配の逆転です。

 

機長の階級の方が低くなるということです。

 

軍隊は、経験で統率されるものではなく、階級で成り立っている世界です。

 

階級が上がるごとに、それ相応の技術や経験を下級者は期待しています。

 

しかし、これが逆転した時にその判断基準が複雑になるのです。

 

これは、パイロットに限らずどの職場でも起こっていると思いますが、瞬間瞬間の判断を求められる航空業界ではシビアな問題になる時もあります。

 

長々と思いつくままに書いてしまい申し訳在りません。

疑問が少しでも解きほぐれたら嬉しいです。

 

(前回のブログ)

   

 

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↓↓↓↓

陸自LR-2 事故調査結果の公表に関する報道について(私的感想)その1

平成29年5月15日、北海道函館空港災害派遣任務中に陸上自衛隊連絡偵察機 LRー2が墜落しました。搭乗していた隊員の皆さんのご冥福を改めてお祈りします。

昨日(平成29年9月13日)事故調査報告が公表されたことをマスコミ報道で知りました。

 

 

情報元

 

まずは、情報を整理するのにリンク先を貼っておきます。

北海道・北斗の陸自機墜落 異常降下気づかず、直前驚く声がレコーダーに (北海道新聞) - Yahoo!ニュース

 


headlines.yahoo.co.jp

陸自機墜落 衝突直前に驚く声 | 2017/9/13(水) 11:19 - Yahoo!ニュース

 

 

(北海道UHB)

4人死亡 自衛隊機墜落 「自動操縦"解除"を認識せず」事故調査結果を公表 北海道 (北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース

 

時事通信

自動操縦解除気付かず飛行=降下続け機体異常姿勢―5月の陸自機事故調査 (時事通信) - Yahoo!ニュース

 

(読売新聞)

自動操縦の誤解除で墜落…陸自調査結果 (読売新聞) - Yahoo!ニュース

 

事故原因について

 

私見の前提

今回のブログの内容は、1次情報である事故調査報告書を見ずに、マスコミ報道からの情報から書いています。ですので、的外れになっている可能性があることを読まれている方はそのあたりをご考慮ください。

 

自動操縦装置について

 

 

自動操縦装置に起因する事故で思い出すもの

 

平成6年に名古屋空港(現県営名古屋空港)にて、中華航空エアバス機が着陸時に墜落した事故です。以下を参照してください。

中華航空140便墜落事故 - Wikipedia

この時の事故原因も、自動操縦装置に関わるものです。

 

今回の事故原因とは異なりますが、何が言いたいかというと、

「自動操縦装置はパイロットの労度を軽減させ、複雑な作業を的確に行わせることができる」

 

が、

 

パイロットが適切に操作、管理しなければ事故の原因になる」

 

ということです。

 

自分の体験談

 

パイロット学生時代

 

私は、訓練生時代にはビジネスジェット機での訓練で、自動操縦装置を使った訓練を行ったことがあります。ただ、自動操縦装置の使用自体を熟知するというより、どんなものかを体験し以後の任務に生かすという程度でした。

 

ただ、その時感じたのは、機能を熟知して適切に使用すれば、なんて便利なものなんだろうというものです。

 

その時も感じた通り、「適切」に使用すれば、なんですね。

 

 

航空自衛隊救難隊ヘリコプターの自動操縦

 

その後、私はヘリコプターパイロットになりました。しかも旧型機を保有する部隊への配属でしたから、皆さんが想像するような自動操縦装置とは無縁の世界で操縦の道を極めていきました。

 

当時、搭乗していたのはV−107(バートル)という航空機で、開発当初は自動操縦装置は何もついてませんでした。

 

昭和47年に宮崎県沖で米海軍機が墜落、救助に向かったV−107が夜間洋上進入中に墜落したことをきっかけに、姿勢維持、簡易的な自動アプローチ、気圧高度維持、自動旋回、などの機能が追加装備されるようになりました。

 

その後、UH-60Jの導入により自動操縦装置はさらに進化し、V-107に装備されていた機能よりもさらに高度な自動操縦装置が装備されるようになりました。

 

退職する直前には、新型のUH-60Jが導入されさらに便利な機能が付加されてます。

 

最も危険な、夜間洋上救出

 

自動操縦装置は一切使わないマニュアル操縦を徹底的に先輩パイロットから叩き込まれ、なんとか安全にできるようになっていました。この時は、毎回大汗をかきながら、実際の救助現場を想像しながら、いつ出動しても任務を安全に遂行して、クルーと遭難者を無事に基地に返すことのみ考えていました。

 

それが、新型機の自動操縦装置を使用し始めると、今までの苦労がなんだったのか・・・いとも簡単に夜の海でホバリングしてくれるようになりました。

 

失敗

でも、その時にやはり自動操縦装置の操作を誤って、失敗したことがあります。

 

当時、UH60Jの機長訓練をやっている最中で、航空機に関しても、自動操縦に関しても、まだまだ経験が少ない時でした。

 

それは、進入中にゴーアランド(進入を中止し上昇する)モードに入れる必要があった時です。

 

進入開始点を誤り、目的の場所でホバリングできないと判断して、進入のやり直しを決意しました。

 

右手の操縦かんの親指であるスイッチを押すことにより、上昇していくのですが、その時は押しても上昇せず、

 

なんで!? と、若干の混乱状態。

 

何回もスイッチを押してる間に、操縦桿に自分の操作を加えてしまい、コンピューターが規定値以上の機体運動を感知して、警報が点灯しました。

 

その時は、自分の操作で警報がついたかどうか判断できない状態でしたので、訓練を中止し基地に帰りました。

 

地上に降りてから冷静に操縦桿を触ると、その原因がわかりました。似たようなスイッチがすぐそばにあり、そのスイッチを何回も押していたのです。

 

LRー2の事故に関して

自動操縦装置の解除

 

今回の事故調査の報告では、ボイスレコーダーの解析によりレーダーから機影が消える前に自動操縦装置が解除された時に発する音が記録されていたそうです。

 

この、自動操縦装置を解除するスイッチがどこにあるのかというと、パイロットがすぐに操作できるように操舵輪(操縦桿)の指が届くところにあります。(全部ではないと思います。)

 

また、パイロットが管制官と無線で話すときのスイッチも、すぐに操作できるように操舵輪(操縦桿)についています。

 

ですので、間違って押してしまいやすいところにあるのは事実です。

 

 

事故は、複合した条件が重なり起きる

今回、事故調査報告書の中で種の事故原因を自動操縦装置の解除に気づかなかった、というようなことが発表されていますが、単純に考えると、そんなことが事故原因になるの?って思いませんか。

 

自動操縦装置が間違って解除されても警報音が鳴るようになっているのですから。

 

でも、自動操縦装置の操作だけをパイロットがしているのであれば気づきますが、人間意識していなければ、音なんか聞こえないことが多くあります。

 

例えば、家で好きなテレビ番組を見ている時に、奥さんから何度呼ばれても返事をしない旦那さんっていませんか?これ、パイロットでも聞こえなくなっちゃいます。

 

そうなんです、他のことに気を取られていると、聞こえなくなってしまうことはあるんです。

 

今回の任務

陸上自衛隊が唯一保有する固定翼機、LRー2。その操縦士も少なく、計器進入する訓練機会も経験もそんなに多くないと思います。(民間旅客機、航空自衛隊と比べて)

 

その上、災害派遣での飛行中、間も無く函館空港に着陸、着陸したのちの帰投計画、天候が悪い、クルーの権威勾配が逆転などの状況にある中、同時並行的に様々な判断をしなければならないのです。

 

しかも、計器飛行をしながら。

 

計器飛行状態を車で例えると

 

濃霧で視界が10mくらいなのにカーナビの道路標示だけを見て、速度を守って運転するようなものです。

肉眼では、どこまでが道路か判断できない状態で、カーナビ上の道路にいるように運転することって、想像したことありますか?

 

車は2次元ですが、飛行機は3次元です。

 

経路を守りながら操縦するのは当たり前で、高度も守りながら操縦するのです。

時には高度を下げながら旋回することもあります。

今回はそんな最終進入に近い場所で起きていると思います。

 

自衛隊パイロットの能力

自分は、やって当たり前、できて当たり前、と思っていたパイロットの能力は、一般社会では当たり前ではなかったという、当たり前のことを最近実感しています。

 

操縦しながら、次の任務のことを考え、そしてクルーとも話して一つの任務を達成する。そんな当たり前のこと、それは、日頃の訓練で培われていたんだということです。

 

経験値だけで能力の比較はできませんが、経験していない人と比べられればよく理解できます。

 

 

終わりに

今回の事故原因が出て、パイロット個人の責任のようにも見えるのですが、逆を言うとそれくらい困難なことを日頃やっているということです。

 

また、パイロットも非常に困難なことをやっていることに、無自覚であるということ。

 

事故が起きて、その事故原因について分析して、同種事故が起きないように、パイロットが意識する。

 

それだけでもしなければ、お亡くなりになった方々に申し訳ないです。

 

責任問題は発生するのは致し方ないですが、空の世界に生きる人たちには、お亡くなりになった全ての方の経験を無駄にすることなく、今後も安全に飛行してほしいです。