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自分のやりたいことができるようになる 折れない心コーチング ーrescueJ’s blogー

元航空自衛隊のRESCUEパイロットが自分のやりたいこと、自分が何ができるかを発見できるようになる、折れない心(レジリエンス)について4つの原則を中心にお話ししてます。

陸上自衛隊 偵察機 LR-2 事故原因の憶測について(参考意見)

函館で墜落した陸自機の事故調査がはじまりました。

 

 はじめに

 

いろいろな方が事故原因を推測されていたり、天候が悪くて無理矢理とんだのでは?

などのような書き込みをみました。

そんな中で、航空機の運航に関しての理解を深めていただければと思い、参考意見としてお話したいと思います。

 

最後の管制指示で高度1000mの指示

 

通常、管制官から航空機に対しての高度の指示は、「m(メートル)」ではなく、「ft(フィート)」を使用します。

 

ネットニュースでは、1000mというメートル表示をしていますが、これは一般のユーザーがフィートに馴染みがないので、メートル換算しているだけです。

 

ある方が、管制官が1000mと言わなければいけなかったところ、1000ft(約300m)と言ったために、航空機は山にぶつかったと推測されていましたが、こんなことはありません。

高度計は、フィート単位ですから、メートルで指示することもなければ、パイロット側からメートルでリクエストすることはありません。

 

 

馬鹿な指揮官が天候が悪いのに命令した結果事故が起きた

 

今回、災害派遣陸上自衛隊に養成され、それを受けて陸上自衛隊の指揮官が受理し、派遣命令を飛行部隊に発出されたと思います。

 

命令は指揮官が行いますが、重要なことは、航空機運行の決心を行うのは

機長です

ですから、機長が安全に運航できないと判断した場合は、いくら指揮官の命令であても飛行することはありません。

 

指揮官も無理な命令はしません。できるという情報を元に決心します。

 

天候が悪くても、航空機の性能、空港の気象状況を踏まえて、機長が自分の操縦技量で運航でいるか否かを決心します。

 

もし、離陸したのちに天候が悪化した場合は、機長は勇気をもって引き返す訓練をしています。

 

ですから、指揮官が馬鹿であったわけでもなく、機長も航空機を運航できる気象状態であったから運航を決心したのです。

 

しかも、雲が低く、視程が悪かったので計器進入を選択しています。

 

指揮官がパイロットではなく、気象状況が悪くても命令だから行け!と命令したから事故が起きたという人がいたら、それは機長の判断能力が悪いと言っているようなものです。

 

機長は、無謀な命令であっても実行不可能であれば、可能になるまでスタンバイするかキャンセルを指揮官に上申します。

 

フライトデーターレコーダーの未搭載について

 

今回のフライト前に、フライトデーターレコーダーの不具合が見つかり、未搭載のまま運航していたことに、自衛隊はなにやっているんだ?という方がいますが、規則上は搭載しなくても飛行できる状態にあります。

 

想像してください。有事にフライトデーターレコーダーが故障しているので飛行しませんという自衛隊の飛行部隊があったら、国民は納得しますか?

 

あと、故障した状態で飛行しなければいけなかったのは、予算の問題でもあります。

搭載しなくても良い装備品と搭載しなければいけない装備品があったとしたら、どちらに予算を要求しますか?

 

限られた防衛予算の中で、各担当者が頭を悩ませながら工夫して毎年の予算獲得と予算内での運用をいかに効率よくするか考えているのです。

 

事故原因については、約4か月後に報告されることになりますが、憶測での発言が事故関係者を苦しめることが無いことを願っています。

f:id:rescueJ:20170518005134j:plain

※参考:空自UH-60Jのフライトデーターレコーダー

まとめ

航空機の運航に関しては、各自衛隊でも若干の違いもあります。

ですので、元空自の私がとやかく言っている内容も、若干ずれていることもあると思います。

ですが、航空関係者でもないかたが事故原因の推測をマスコミで流したりすることが、誰かをいづつける事になるかもしれないということを覚えておいてください。

 

 

陸上自衛隊偵察機 LRー2 災害派遣中の墜落から考えること

 今回は、ある方から今回の事故について、パイロットとしてどう思うか質問を受けたので、この場を借りて少し話したいと思います。

 

 

 

まず初めに

残念ながら災害派遣任務中にお亡くなりになられた、4人の陸上自衛官のご冥福をお祈りします。

 

 

 

 ニュース報道で偵察機の行方不明(レーダーロスト)生還して欲しかった、ただそれだけが願いでした。

 

 航空自衛隊在職時も多くの仲間を航空機事故で失いました。

 

行方不明の情報を得た時はいつも、必ず生きていると思い、捜索任務に向かいます。

地上に残っている整備員も同じ思いです。

 

しかしながら、陸上部での事故において、航空機が行方不明になった時の生存率というのはかなり低いものになっているのは事実です。

 

そんな中、私が在職中に陸上部での捜索任務に従事した時に、生存者を発見できたのは本当に奇跡でした。

過去記事にその時のことを書いています。 

www.orekoko.com

 

事故の要因

 

事故調査

 

事故は様々要因が重なり合って起きるものです。

自衛隊でも事故調査委員会が事故原因について調査をします。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1955/ax19550526_00035_000.pdf

上記のリンク先にある、自衛隊の訓令にその細部が記載されています。

今回は、陸上自衛隊事故調査委員会がその任務に就くことになると思います。

 

また、民間機の事故であれば、国土交通省運輸安全委員会航空・鉄道事故調査委員会)がその仕事を行います。

http://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/

 

事故が起こるたびに、マスコミ報道で事故原因について専門家やコメンテーターが事故原因について、推測(いや憶測か?) しています。

専門家と言われる人でさえ、事故調査に関しては素人の人が多いです。

そんなマスコミで報道される情報が世論を形成したりします。

また、その後に裁判が行われるような事故であれば、裁判の判決にも影響するのが事故調査の報告書です。

 

 

事故調査は何の目的があって行うのか

 

航空自衛隊では、先ほどの訓令に基づき、航空幕僚長が逹を制定して事故調査に関しての細部要領についてしめしています。以下がそのリンクです。

http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1985/gy19851009_00025_000.pdf

 

この中の第19条に以下のように記されています。

 

(航空事故調査報告書等の使用制限)

第19条 航空事故調査報告書及び調査資料は、航空事故の再発防止のために使用する ことを目的とし、隊員の勤務状況を判定する資料及び懲戒処分の証拠等に使用して はならない。

 

 事故調査後に事故調査報告書というものを報告文書として作られますが、事故の原因を明らかにするために作られているものであるので、そのほかの用途には使用してはいけないことになっています。

 

とはいうものの、調査の中で明らかになった事故要因に、人為的なことが含まれていれば、

・懲戒処分こそされないものの故人の尊厳を傷つける可能性

・航空機の運航に携わった隊員にも影響を及ぼす可能性

などが起こることが推測できます。

 

本来事故の要因を客観的に資料を集めて、再発防止にするのが大きな意味であるのに、違った用途に使われることが一度でもあると、誰もが本当のことを話さなくなる可能性があります。

 

先ほども言いましたが、マスコミで誇張され報道されたり、裁判で利用されることも考えると、言いたいことが言えなくなることもあると思います。

 

今回の事故に関して思うこと

 

今回は、札幌飛行場(丘珠駐屯地)から離陸して、函館空港に緊急空輸を必要としている患者を迎えに行くという任務でした。

 

天候が悪く、計器飛行方式(IFR)での運航であったので、雲中を飛行していたと推測できます。

 

事故があったのは、下記の写真の通り函館空港に着陸する最終進入経路(ファイナル)で起きたものと思います。マスコミ報道の場所とグーグルマップからイメージ図を作りました。

 

f:id:rescueJ:20170516185437j:plain

 

パイロットは、自分の飛行している位置、高度、速度などを計器から判断して進入する方法で着陸をしていたもので思います。

次の写真の滑走路延長線上に近いところに設定されている、進入経路を飛行して行くことになると思いますが、地形は何も見えていないので空港までの距離と方位で自機の位置を把握します。(地図表示ができる装備がある航空機は、地図も参照します。)

 

f:id:rescueJ:20170516185442j:plain

障害物、今回は山岳部の一番高いところから安全高度を足した高度を飛行するように進入経路が設定されているので、計器が誤表示すれば安全に着陸はできなくなります。

 

また、ある程度の安全高度が設定されていますが地面との間隔が狭くなって行く最終進入中は、短時間の操縦不能状態や下降気流により、地面に激突するリスクが高くなっています。

 

 

私見という罠

私自身は、関係者でもありませんし、当該機に乗ったことも函館空港に計器進入をしたこともありませんので、何もいうことはできないと思っています。

 

今回、敢えてここまで地図などを用いて分析したのには理由があります。

 

それは、私というフィルターを通して考えたことは、やはり私の意見でしかないんです。

 

パイロットでない人から見れば、パイロットの意見というのはかなり詳しく分析できるものですが、真実ではないんですね。

 

だからすいません。あまり推測で意見を言いたくないというのが、私の考えです。

 

専門家だから、パイロットだから、間違い無いだろうと思う方が多くいる中、専門家だからこそ意見は慎重にいうことも必要であると思っています。

 

まとめ

 

ヒューマンエラーが事故原因になることは多くあります。

 

パイロットがしなくてはいけないのは、その事故の原因を知ること以上に、その事故から自分が事故を起こさないようにする教訓を得ることです。

 

事故原因は最終目的ではなく通過点。

 

飛行関係者には、今後も仲間が命をかけて作った教訓を無駄にすることなく、日々のフライトに臨んでほしいと思います。

 

折れない心 精神編 小型機墜落〜パイロットが考える最悪のシナリオ

ワシントン州で小型機が墜落する模様が、車載カメラの動画で報道されていました。これを見て、パイロットとして訓練していきたことを思い出しました。

www3.nhk.or.jp

 

 

離着陸時に一番事故が多い理由

 

 これは知っている人が多いと思いますが、ズバリ 

 

 エンジン出力を大きくコントロール(操作)するからです!

 

特に、離陸時は最大出力に近い状態まで、エンジンを酷使しますのでこの時にエンジントラブルになりやすいです。

 

何点か他の要因を並べてみると、

 

 ☑️ 離陸時は燃料満載(機体重量が重い)なのでエンジン出力の余裕がない。

 ☑️ 飛行場は動物、特に鳥が多いので離着陸時にエンジンに吸い込むトラブルに。

 ☑️ 混み合う飛行場だと、管制周波数での無線が多くなり、注意力が分散される。

 ☑️ 低高度において、速度の変化が大きく、機体のコントロールが難しい

 ☑️ ギアやフラップなど、離着陸時に操作するものが多い

 ☑️ 訓練生だと、離陸したのちのことを考えているので緊張している。

 

離陸時

 

 前述しましたが、離陸時に一番怖いのは、機体が重重量で、かつ標高が高いところからの離陸出力に余裕がないことです。

 

 日本の空港ではそんなに意識することはないのですが、海外の空港では標高が富士山くらいのところはザラです。

 

 日本という環境では、性能に余裕があっても、高温多湿の国や、高地に空港がある国では、同じ航空機でも出力の余裕に差が出てきますね。 

 

着陸時

 

 着陸時、いろいろなことを考えます。

高度処理はどこでするか、

着陸は、計器進入をするのか、有視界飛行で侵入するのか、

予定通りの時間に着陸できるか、

飛行場の風が制限以内であるか否か、

急激な天候の悪化がないか、

などなど、その時々でいろいろなことを考えながら機体を操作しています。

(僕が初めて部隊に配置された時は、隊長に文書の決済をもらいに行かなければ・・・・なんて思いながら着陸していました。)

 

自身が経験したトラブル

 

事故には至らないまでも、いろいろな経験をしました。

事前に対処したから事故にならなかったとも言えますね!

 

①エンジン計器がおかしい!

 これは、KV-107Aというヘリコプターの訓練を受けている時に起きました。

(これは、僕がこのヘリコプターのラストフライトの時のものです。)f:id:rescueJ:20170505222908j:plain

 飛行訓練では、離陸中のエンジントラブル対処訓練を嫌という程やります。これは、エンジンが二つ以上ある飛行機(双発機)では必須の訓練です。単発(エンジンが一つ)機の場合は、離陸直後にトラブルがあったら、即座に不時着に適した場所へ航空機をコントロールする必要がありますが、双発機の場合は離陸を中止するか、継続したほうが安全かを判断する必要があります。

 なので、訓練で離陸する際に、教官が絶妙なタイミングで片方のエンジン出力をアイドルまで絞って、模擬のエンジン故障対処訓練をよくやるんですね。

 いつ絞られるかわからないので、離陸中は本当にエンジン計器をよくチェックしながら上昇していく癖がつくんですね。これは、とても良い癖になります。

 エンジントラブルは初動対処がとても重要です。

 計器に異常を認めたらすぐに次のアクションを取る必要があるからです。

 

で、その日もいつも通り訓練に臨み、離陸しました。そして、離陸上昇中(300ftくらい?)に、片方のエンジン出力(厳密にいうとトルク計)が急激に減少していきました。

 この時は、名古屋飛行場の東側にある航空自衛隊ヘリスポットから、西側の訓練エリアに向かう予定でしたので、離陸上昇中に滑走路上空を横断していきました。

 エンジントラブルがあったのは、ちょうどその滑走路の真上を飛行中。

 教官は、俺のことを試してるんだな。離陸途中に模擬トラブルを起こして、前方の滑走路に着陸する判断ができるかどうかを見てるんだな。(ここまで2秒くらい)

 「single engien failure ! 前方の滑走路に着陸します」

と言い、着陸操作をしたところ、教官は「はっ?」という顔をしているではないですか・・・・

 状況をつかんだ教官が、すぐさまコントロールをとり、滑走路ではなく自衛隊側の勇往路上にあるヘリスポットに着陸させました。

 

 実は、教官の模擬エンジン故障訓練ではなく、実際の故障でした。

教官よりも早く故障に気づき、対処を取れたことで、この時訓練は中止になりましたが、自分の評価は上がったので良かったです!

 

②操縦桿がおかしい!

 

 今度も、同じヘリでの訓練ですが、飛行時間も1000時間弱の頃でした。

操縦にも訓練にも慣れてきた頃でしたが、未だ恐ろしい先輩パイロットがたくさんいた時代です。

 

 この時は、離陸して1000ft(300m)で水平飛行に移り、加速中に置きました。

 

「あれ?操縦桿の位置が変・・・・」

 

飛行機は、加速する時に操縦桿をどんどん前の方に倒していくんです。

ヘリコプターも、飛行機と同じような感覚で操縦できるように、同じく加速していくと操縦桿を前方に倒していきます。

 

でも、この時は、加速していこうとすると操縦桿を後方(手前)に引かなければいけなくなっていました。

 

あれ、あれ・・・と、思っていたら、先輩パイロットに操縦桿を取られて、

「なんかおかしくないか?」と言われ、

「はい、おかしいです・・・・」と答えたところ、

「おかしかったら、どうするんだ!!」と、先輩の雷が落ちました^^;

 

先輩が仕掛けた、模擬故障訓練の状況だったんですね。

先ほど説明した、ヘリコプターも飛行機と同じような感覚で操縦できる、という機能を持つ装置のサーキットブレーカー(電源)を抜かれていたんです。

 

 今でこそ、フライトシミュレーターがあるのでこういった訓練は、実機を使わないでやるんですが、大先輩がたは実機を使った模擬訓練を経験してこられてかたばかり。ある先輩は、実際にエンジンに燃料を供給するバルブのスイッチを本当にオフにされて、飛行中にエンジンが停止するという状況をさせていました。今の時代では、管理面でそこまでやるなと言われそうな訓練を平気でやっていましたね。

 おかげさまで、良い訓練ができました。

 

 

③鳥が進路妨害

 

 これは、僕が飛行機の免許をとる時の最終試験でのフライトで起きたことです。

飛行機の免許をとる時には、ヘリと同様に離陸途中のエンジントラブル対処を訓練します。

 ただ、この時はエンジントラブルではなく、離陸する滑走路前方を鳥が飛んでいこうとしているという状況でした。

 離陸を継続するか否かは、滑走路の長さに応じた、離陸決定(決心)速度というもので判断します。いわゆる、V1という速度ですね。

 この速度よりも、早い速度で離陸を中断した場合安全に滑走路内で停止できないのです。オーバーランしてしまい、下手をすると擱坐して機体も大破、火災の可能性もあります。

 

 ですので、離陸をするか否かを早急に決断しなければいけません。


 でも、この時頭をよぎるのが、「最終検定」ということ。

鳥とあらる可能性は少ないだろう、と思って離陸を継続するのが訓練生の思考パターン。離陸を辞めたら、自分の飛行計画が狂うからそのまま行っちゃえー!

 と、思ったのですが、


 結果は、離陸は中断しました。そして、減速操作をしてから再度離陸位置まで戻り、再度離陸操作を開始です。

 

不測事態に対応するための徹底的な訓練

 

 今回、3つの事例を紹介しましたが、どれもこれも後から考えると大したことはないのですが、一つ間違えれば大惨事に繋がります。

 

 アメリカで起きた事故は、エンジンが一つしかない飛行機で、離陸直後にエンジンが停止した模様です。

 このとき、パイロットがどのように判断してこの道路上に着陸を決心したかまではわかりませんが、おそらく安全に降りれる場所がそこしかないと判断したんでしょう。

 

 僕が、初めて乗った飛行機もエンジンが一つしかありませんでしたから、離陸直後にエンジンが止まったらどこに不時着させるかを詳細な地図を使って、同期生と一緒に研究しました。備えあれば、とっさに判断ができるものです。

 

心理の面から

 

 とっさの判断をするには、どんな状況にも冷静に判断できる精神力が必要になります。この精神力、僕たちは地上において相当鍛えてきました。

 意外と知られていないんですが、高校卒業後に航空自衛隊パイロットになれるコース(航空学生)というものがあり、そこで2年間の地上訓練を受けるんです。飛行機に乗らない、飛行機に関係ない、地上の訓練です。ちなみに、以前、航空学生について書いた記事を貼り付けておきます。

 

www.orekoko.com

 

この2年間、相当過酷な状況に追い込まれて訓練します。特に、1年目は、先任期と呼ばれる先輩が後輩を指導してくれるので、24時間気を休めることができませんでした。

 

体が心を作る

 

精神的には、先輩の指導でかなり鍛えられるんですが、実は強い心はそれだけで作られたわけではないんです。

それは、極限まで追い込んだ体力作りによって作られていくんですね。

 

ひたすら走る、泳ぐ、銃を持って走る、チームで走る、チームで泳ぐ、などなど自分だけではなく、皆で乗り越えなければいけないことが多くありました。

 

そんな時に、ジャージの下に着ていたのが、このTシャツです。

 

 

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なんと、このTシャツ、24年前に購入して着ていたものなんです。未だ現役です!
当時の日本製のTシャツは丈夫だったんですね。

このTシャツを着て、基地1周の駆け足(ランニング)に励んでいたことを思い出します。

 

実際のフライトトレーニング・・・の前に

 

話が逸れましたが、いろいろなトレーニングで精神力を鍛え、何があっても動じない心でフライトに臨みますが、パイロットの訓練で一番重要だと思うのが、

 

「イメージフライト」です!

 

このイメージフライト、何をするかというと実際にフライト訓練をする内容を前の日に一度イメージするんです。

 

朝起きてから何を準備するか、

教官には今日のフライトの説明と注意点などをブリーフィングし、

パラシュートなどの装具をつけ、

離陸前の飛行機の最終点検をして、

飛行機に乗り込み、

管制官に離陸許可をもらい、

離陸後に訓練エリアに向かい地形をチェックし、

予報されている天気でどんな雲があるかを想像した上で訓練を組み立て、

うまくいかない時のリカバリー方法を確認し、

全ての訓練項目を終えて飛行場に帰り、

着陸訓練を何回も繰り返して、

安全に着陸、駐機場まで帰りエンジンを停止させる。

 

簡単に書くと、こんなことを実際に飛んでいるかのようにイメージのみで訓練するんです。詳細にやればやるほど、効果があります。

この訓練のミソは、すべてがうまくいくまで、何回も繰り返すことです。

イメージで上手くいかないものが、上空で上手くいくはずがないから、地上で徹底的に訓練します。

 

実際のフライトでは

 

地上で準備して訓練したイメージフライト通りに飛ぶだけです。

変化するのは、

教官の怒る(指導)タイミング、

実際の天候、風向風速

感覚とイメージの差です。

これらを実際のフライトでは、その場その場で修正し対応していきます。

ですが、自分がイメージできていないようなトラブル対処訓練をいきなり教官からやらされたらうまく対応できないことが多くあります。

 

まとめ

 

今回、アメリカの航空事故ではとっさの判断で死亡者が出ない対応が取れたと思います。

この判断は、一朝一夕には身につかないもので、日頃の訓練の賜物で身につくものです。

特に最悪な状況であった、離陸直後のエンジン停止に対処する方法は日頃から意識しておかないと、とっさの対応はできません。

 

このことを地上の仕事に置き換えると、皆さんも応用できることが多いですよ。

仕事における、最悪のケースをイメージする。

そして、そうなった場合にどう対応するかをイメージする。

そうしておくことによって、実際には起きない最悪に備えておくことにより、自信を持って仕事に集中できます。

 

何事も経験、経験できないことは他人の経験を自分に置き換えて擬似体験(イメージ)するだけでも、自分の対応力が向上します。

 

最悪に備えて、実際は楽しく実行する。

 

強い心、それは何事にも動じないのではなく、事前のイメージで様々な失敗を経験すること、そして、最終的には成功したイメージのみを心に焼き付けて日々の生活を送る。

これが、人生をうまく生きるコツです。

折れない心 心理編 自衛隊 女性戦闘機パイロット養成  

 

 

陸上自衛隊、女性戦闘ヘリパイロット養成

 

平成29年5月3日(水)の産経新聞にこのような見出しと、カラーの写真が載ってました。

www.sankei.com

年齢は、僕らと同世代の輸送ヘリパイロットみたいですね。

彼女が、コブラ(AH-1)の機動性を遺憾なく発揮できるかどうか、それはわかりません。まずは、無事に機種転換訓練を終えて現場で活躍して欲しいですね。

 

今回のニュース、

・ようやくここまで来たのか、

と思う人もいれば
・女性を戦闘機(ヘリ)に乗せてはいけない!

と思っている人もいます。


今回は、僕の入隊時期から始まった、自衛隊女性パイロットについて思うところを、みなさんにお話ししていこうと思います。

 

そもそも、女性自衛官はどのくらいいるの?

 

 そうなんです、そこ重要ですよね。各自衛隊の女性が占める割合は、「消費税と同等」と覚えてもらえればいいです。

 ただ、この法則は7パーセントに増税されてからはズレが生じてきて、現在は6%くらいとのことです。僕が入隊した頃から平成20年くらいまでは5%でした。

 それほど多くないと思うか、多いと見るかは、自衛隊という職場をどう見るかによって変わってきますね。

 

 

航空自衛隊の女性パイロット

 

僕が入隊した頃の時代背景

 今と違って、僕たちの世代までは第2次ベビーブーム世代と言われていて、子供の数がなにせ多い!

 小学校も児童数が増えるにつれて、新しい学校を新設していった時代。僕の小学校も開校5年目の新しい学校でした。当時は、開校5年毎にお祝いをしていて、紅白饅頭を入学2年目と卒業時に戴いた思い出があります。良い時代でした〜

 

 そんな幸せ過ごしていた時代、みなさんご存知の通りバブル景気が弾け(未だにどう弾けたのか実感はありません)就職難の時代へと入って行きました。

 と、言ってもバブル期に比べたらという意味でした。でも、就職に有利な大学へ進学したいと思う生徒が多くいたので、今と比べると大学受験で結構苦労していたと思います。

 という僕も、宇宙に憧れる高校生でしたので、航空宇宙工学などがある大学に行きたかったのですが、なかなか、僕の偏差値が足りないのと、地元以外の私大に行くとなると金銭面で厳しかったです。(僕の地元は北海道)

 

 当時、大学を出ても就職先で自分のやりたいことが見つからない人が多くいたと思います。

 

平成5年(1993年)入隊

 僕が航空学生として航空自衛隊に入隊した直後、来年度から女性の航空学生が採用されると聞きました。

 正直、とても過酷な日々でしたので、女性が入隊してやっていけるのか?って思うだけでした。同期の中では、女性なんていらない!っていう考えもあったことは事実です。まぁ、そんな考えが男性社会では一般的でしたし、女性の中でも好き好んで自衛隊パイロットになりたい人が多くいたわけでもありませんでした。

 

 ただ、女性でも自衛隊パイロットになりたい!と、思い始める時代ではあったと思います。

 それは、航空自衛隊の輸送機がPKOで海外に派遣されるシーンをテレビでよく見るようになったことも、その要因の一つであったと思います。

 また、全国各地で行われている、「航空祭」での戦闘機やブルーインパルスのフライトをみて、希望して来た人も多くいたようです。

 

フライトスーツの色

 余談ですが、入隊直前の航空ファンという雑誌にフライトスーツの色がオレンジから緑に変更されることを知り、少しだけ残念な気がしました。当時、パイロットといえばオレンジのスーツだったからです!同期の中では、体型が大きいか小さい人は、在庫が残っていてオレンジを支給されていました。

 ですので、女性でオレンジを着ている人は航空自衛隊にはいませんでした。海上自衛隊は、オレンジからODへの移行が少し遅かったので、おそらく女性パイロット候補生でオレンジを着ていた人がいたのではないかと思います。海上自衛隊の方でこれを読まれている方がいましたら、ぜひ、コメントお願いします!

 

航空自衛隊、初の女性パイロットは・・・・

 実は、女性のパイロット候補生は航空学生(平成6年入隊)が初めてにはならず、同時期に一般大学卒業枠から入隊された方が、初のパイロット候補生だったんです。

 平成6年に幹部候補生として入隊された、Tさんです。一般大学を卒業後に幹部候補生として、奈良にある航空自衛隊幹部候補生学校を1年で卒業し、平成7年からパイロット候補生として訓練を開始しました。

 僕も平成7年から飛行訓練を開始しているので、同時期に同じ基地で訓練を受けていたので、よく覚えているんですよ。

 

 先ほど紹介した、初の女性航空学生は平成8年から飛行訓練開始しています。

 

女性パイロットの活躍の場

 当初は、輸送機と救難機(救助ヘリを除く)にのみ門戸が解放されました。のちに、女性パイロット教官が誕生して行きましたので、訓練機にも多くの女性パイロットが活躍するようになりました。

 

本音と建前

なぜ、女性パイロットが戦闘機や救助ヘリコプターに乗れないの?

 これは、リンク先の記事にも一部記載してあります。が、正直いうと表の理由と裏の理由があるのではないかと思っています。

 現場目線と管理者側目線と言っていいかもしれません。

 軍隊、自衛隊もある程度、上級司令部に行くと、仕事の内容にはお役所仕事的な政治的配慮を求められることになります。要するに管理者目線で仕事をしなくてはならないんですね。

なぜか?

 

建前

 それは、防衛省(当時、防衛庁)に属する自衛官は、特別職国家公務員だからです。航空自衛隊だけで物事が決まるわけではなく、最終的には防衛大臣(長官)まで報告されることが多いのですね。

 そして、予算や新規案件で目立つもの(今回の女性登用)は、国会での質問も起こりうるので、政治の場でお答えできるような『論理的な回答』を用意しなくてはならないと推察します。

 

本音

 

当時の時代背景

 

 でも、実際のところ、現場では違うことを感じていたと思います。

というのも、当時の時代背景から考えてもらうとわかるのですが、僕たちがパイロット候補生になった頃に、物事を決める立場にあったパイロットは40−50歳です。

昭和の男達です。

この昭和の男達が生きていた時代は、女性の社会進出が盛んになり始めた時代でした。

 データーは提示できないのですが、このころは女性の社会進出も多かったのですが、現在と比べて、結婚して退職する人も多くいたのも事実なんです。それは、女性に厳しい労働状況だったり、昇任制度が未整備でいつまでたっても自分のやりたい仕事ができないことも影響していたことも影響していたと思います。

 

 それが変化し始めたのが、昭和60年(1985年)の男女雇用機会均等法の成立です。

 なにせ、法律で決まったのですから官公庁の一つである、防衛庁(当時)も取り組まなければいけません。

 で、パイロットという当時の聖域にもメスが入れられたと思います。(推測)

 

現場の本音

 というところで、女性が社会進出しても結婚で退職、または、妊娠出産で休職となると、男達は何を考えるというと、いつ辞めるかわからない女性が現場に来ると、現場を支えるパイロット(男性)が大変!自分たちの負担が大きくなる!シフトが回らなくなる!などなどの反発が起こったことが推測できます。

 実際、僕は救難隊で救助ヘリに乗っていましたが、一つの部隊に配属されるパイロットの数は意外に少なく、誰かが突発的にいなくなると、その代わりをするのがとても大変でした。最終的な説明がどのようにされているかはわかりませんが、現在も女性救助ヘリパイロットが存在していません。

 

 実際問題、女性パイロットの中には、一人前になったなーって思ってた30歳くらいに退職するという女性パイロットも多くいました。男性パイロットも退職する人もいるのですが、比率的に目立ってしまうんですよね。

 あと、個人的に救助ヘリに女性が来ない方がいいと思う理由があります。それは、救助ヘリの場合は、救助のために救難員(メディック)を海や山の救助現場に下ろすんです。一度下ろしたら、無事に救助しなくてはならない。つまり、命を託されているんです、屈強な救難員の・・・・命。



戦闘機パイロットに思うこと

 救助ヘリコプターと違い、戦闘ヘリや戦闘機は直接的に相手(敵勢力)の戦闘力を奪うことを前提としています。時には、命を奪うことも命令で実行しなくてはならなくなります。

 僕は、身体的能力や男女の機会均等ということではなく、女性の母性というものがこのことに耐えられるのかどうか疑問です。

 

 でも、女性もいろいろな女性がいるので、一概にこんな不安を持つ必要はないのではないかとも思います。つまり、女性という性を考えなければ、能力的には女性の方が優秀な人が多いのですから。

 

これからの時代に必要な考え方

 現在社会では、様々なストレスが原因で精神的に落ち込む方が多かったり、自殺される方も多くいます。ですので、女性パイロットの社会進出に伴い、男女問わず、年齢問わず身につけてほしいこと。

 それは、

 

  物事の捉え方を柔軟にできるようになること

 

です。

レジリエンスだけではなく、様々な考え方で取り入れられているこの考え方。

女性の社会進出に関して、従来の考え方による、いわゆる「常識」で物事を捉えることをせず、その物事を自分の常識の外側から、どう捉えることができるか。

 

女性は、〇〇だ。

 

自分の中で、少なからずこんな考え方を持っている人は多いと思います。

今回の女性パイロットの戦闘機、戦闘ヘリへの門戸解放も、その常識の外側から考えてみてほしいと思います。

例えば、

性別的には女性だけど、男性と同等の体力を持っており、そんな女性にチャンスがひらがった!

なんて捉えると、前向きに応援したくなりますよね!

 

 

まとめ

 僕が現役時代に、航空自衛隊の戦闘機パイロットも女性へ門戸を開放すると聞いていました。  

www.news24.jp

trafficnews.jp

 実は、女子の3期目に当たる試験を受けた女性(高校生)の中には、戦闘機パイロットになりたい、とインタビューに答えている人がいました。残念ながら、その方は試験に合格できなかったので、その思いを実現できませんでした。

 今後、女性の活躍の場が増えていくことには賛成ですが、やはり、周りのサポートが必要だと思います。

 僕は、今新しいライフスタイルを模索中で、家庭のことをしながら仕事をしていこうと思っています。

 

 そう思った時に、支えてくれるのは妻や友人である良き理解者です。

 

どうせ無理、やっても無駄、なんておもわずに、人間の可能性と能力を信じて生きていきたいと思っています。

折れない心 社会編 長野県消防防災ヘリコプター事故から考える。〜他者を頼ることができて、初めて自立した自分に気づく〜

 

長野県の山岳事故

 

先日、長野県消防防災ヘリコプターが墜落した事故以降の状況をまとめて見ました。

まずは、長野県の山岳事故状況ですが、長野県警察の発表資料を見て見ました。

長野県内の山岳遭難発生状況(週報)/長野県警察

これによると、平成29年度は昨年度よりも山岳事故が多くなっているようです。近年のデーターだけですので、長期的な傾向まで分析していませんが、山岳地での事故は引き続き発生していることはわかりました。

 

長野県の対策

 

自己調査関連

マスコミ情報も新しいニュースしか出てこなくなったので詳細がわからないですが、機体の回収について方針が決まったようです。

www.sankei.com

機体を回収してわかることとには限度があると思いますが、事故原因が機体のトラブルであるかないかが判明すれば、期待を整備していた整備員の気持ちがすこし落ち着くのではないかと思います。

 

私自身も運航する側の人でしたが、事故の原因というのは直接的な原因と間接的な原因が複雑に絡み合って発生するものと思っています。

 

山岳事故・救助態勢の維持

 

長野県は、埼玉県と愛知県に応援協定を結ぶ調整を事故後に開始した模様です。

埼玉県とは、3月30日に協定が締結、

愛知県とは、GW前には協定を締結する方向で最終調整のようです。

www.sankei.com

 

 

また、実質的な対応には応援協定だけではなく、警視庁航空隊がGW中に長野県にヘリコプターを応援派遣するようです。

  

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各県、各機関の応援態勢が意味するところ

 

 当たり前のことではあるのですが、長野県の山岳事故対処機能が低下している状態ですので、そこに対して支援できる機関等が支援依頼に基づき応援するということです。

 本来であれば、多くの山岳を管轄する長野県の責任で自治されるところです。そのために、長野県としては県警ヘリコプター航空隊と消防防災航空隊という2つの組織を維持運営してきました。

 知らない方も多いのですが、他県でも同様な態勢が取られているところが多いのです。でも、ヘリコプターがあればいいというわけではない、ということを認識しているのは関係者だけだと思います。

 

ヘリコプターの性能を決める2つの要素

 

ヘリコプターそのものが持つ能力

これを理解するためには、乗用車をイメージしていただければいいかと思います。

 今度、みんなで旅行に行く時に車で行くことになったとします。誰が車を出すかを決めようとした時に、K君が「俺が出すよ」と言ってくれたとします。旅行の出発日に集合場所に現れたK君が乗ってきたのは、軽自動車。実は仲間は4人、荷物も多く車内は人と荷物で満載状態。運転席からルームミラーを見ると荷物しか見えない状態です。まぁ、なんとかなるかと思い出発したところ、山道で上りの連続。エンジンが悲鳴をあげながらなんとか登り終えたものの、皆は一様に疲れている模様でした。そして、そこにきてガス欠の恐れが・・・。いつも以上に過積載であったため燃費が著しく低下していました。なんとかガソリンスタンドまで到着して一安心。目的地へ向かいました。

 旅先で綺麗な女性グループと出会ったK君一行、次の目的地も一緒とのことでしたので、一緒に行くことに。でも、ここで問題が発生。女性グループの車は、国産高級車でK君の軽自動車とは段違いの走行性能。気の利く女性グループは、クルマの座席に余裕があるのでK君の車から自分たちの車に乗ったらどうかと提案され、運転手のK君以外は皆女性グループの車へ。K君は、荷物のみを乗せて女性グループの車を追いかけることに・・・・

 

 つまらない想定だったかもしれませんが、同様なことがヘリコプターの世界でも起きています。

 洋上を航行中の船舶で複数人の怪我人が発生し、早急に病院へ搬送しなければならないという状況は多くあります。この時に、主たる対応は海上保安庁が行うのですが、先ほどのK君の状況と同じく、ギリギリ救助できるヘリコプターの大きさであるかもしれないけど、燃費が悪くなるので航空基地と船舶の往復ができない!ということが発生します。そんな時に、自衛隊のヘリに応援要請がくるのです。

 また、山菜採りに出かけて帰ってこないお婆ちゃんの捜索をある県警ヘリコプターが行なっていました。運良く発見したものの、そのヘリコプターでは救助できるパワーがなく、結局自衛隊に応援要請。

 これは、よくあることです。自衛隊保有するヘリコプターは、有事を想定して導入されるので性能が良いものが多いです。でもお値段もかなりします。最近では、消防防災ヘリコプター、警察ヘリコプターなども高性能ヘリコプターを導入してきましたので、自衛隊が応援することも昔に比べたらかなり減りました。

dd.hokkaido-np.co.jp

 

ヘリコプターパイロットが持つ能力

 もう一つ、大事なのはヘリコプターの性能を最大限に発揮させるためのパイロットの存在です。

 パイロットです!というとパイロットではない人からすればなんでもできる人と思われがちですが、免許が一緒でも持っている能力というのは全然違うものです。

 自衛隊パイロットだけ見ても得意分野が大きく違います。

これに関しては以前に書いたブログを参照してください。

 

www.orekoko.com

 

私もプロの救助パイロットでしたので、すべてのことに精通していなくてはならなかったのですが、やはり限界があります。

それは、訓練環境です。

僕は比較的、高山岳地に近い基地での勤務でしたので、山の訓練も海の訓練も均等に行なってきました。でも、経験していないのが、北国での飛行訓練です。もちろん北海道でも訓練をした経験はありますが数回でしかも秋。雪上でのホバリングは、色々な意味で工夫が必要なんです。これは、経験している人にしかわからないと思います。冬になったらこの場でその工夫がなんなのかをお伝えしたいと思います。

 

自分の能力で足りないと思った時に

 

 今回、長野県はGW中の山岳事故や山岳火災での能力が不足すると見て、各機関等に応援をしてもらうことを決めました。そして、埼玉県と愛知県に応援を依頼して、警視庁からもGW期間に応援をもらえることになりました。このニュース報道を見て、担当者の方々は大変な調整をされたんだと思います。県が違えば運用に関しても考え方が違うので、担当者はりん議を通すのに苦労したはずです。

 

 このニュースを見て感じたのは、自分たちの身の回りでも、もっとこのような支援態勢があれば助かる人が多くいるということです。

 

 仕事において、自分の持っている仕事が多くなり、とてもじゃないけど一人では処理できなくなった時に、能力に余裕のある人に

「支援してください」

と一言言えるかどうか。この一言が自分から出せるようになった時、その人は自立することができている、言えると思います。

 自立というと、すべてを自分だけの力で行わないといけない気がしますが、そんなことができる人なんて、そうそういない!ということに気づくことが大事だと思います。

 

自立というキーワードを考えた時に、

なんでも自分でできる、というマインドから

自分のことをよく理解して、自分ができないことを理解している、というマインドにシフトしませんか。

 

自分ができないことを理解できれば、できることが明確になる。そして、できないことはできる人に支援してもらう。

 

さらにここに大事なことが。

自分ができることが明確になれば、そのできることで他者を支援できませんか?ということ。

 

自分にとって当たり前の能力、ノウハウが、他者にとってはお宝級のものであることが多いのです。

 

だから、自分をよくしりできることを認知、認識することができたら、まず、他者を支援することから始めてみる。それが、回りに回って、自分が必要な支援を受けられることに変わってくると思います。

 

まとめ

 

今回は、埼玉県と愛知県が支援の手をさしのべましたが、これは長野県ができないことを把握していたからこそです。もし、長野県がプライドが高く、警察ヘリコプターだけでなんとかできます!って言い始めたら、誰も支援の手を差し伸べることはできないですよね。

まずは、自分のことをよく知り、できることを認識する。そうして、わかったできないことはできる人から支援を貰えばいい。

でも、その前に必要なことは、まず自分のできることを支援していこうというマインドです。

大きな原則論

 人は本気の支援をした相手から出ないと、本気の支援を受けることはできない。

 本気の支援をしたからこそ、本気の支援を返していただける。

 

日々の生活で意識していきたい原則です。

 

 

 

折れない心 番外編 登山者の防災ヘリコプターでの救助 有料化(埼玉県防災航空隊)

元空自レスキューパイロットが折れない心をお伝えしています。

 

前回、29年2月に投稿した記事の内容について、再投稿します。

 

下の過去記事に書いてある、埼玉県防災航空隊のヘリコプターによる救助が有料化されるとの記事ですが、3月27日の埼玉県議会で条例改正案が成立されたようです。 

 

              過去記事

               ↓

www.orekoko.com

 

先日、事故があった長野県消防防災航空隊ほど、救助要請が多い場所ではありませんが、27年度のデーターでは11件の要請で、5件の出動をしたそうです。

 

請求されるのは燃料費相当を手数料とした約5万円(約1時間の救助活動を想定)のみ、ですので県の収入増が目的ではないことがわかります。

 

これを機に、登山者自ら行う、登山に対する安全対策を見直していく風潮が大きくなればいいなーと思っています。

 

だって、そうすることにより各県の税金使用額が減り、回り回って住民の生活の向上につながるはずですから。

 

災害救助活動は、登山などの普段予想されるものだけを想定されたものではなく、突発的に起こる自然災害などへの救助活動に対しての備えでもあると思います。

 

昨日、那須で発生した雪崩では、ヘリコプターを使った捜索や救助はできませんが、行方不明の方の早期発見と救助にあたる方の無事をお祈りしています。

 

 

 

www.asahi.com

折れない心 心理編 ヘリコプターパイロットの経験(長野県消防防災ヘリ墜落で思うこと)

空自元レスキューパイロットが折れない心についてお伝えしています。

今日は、長野県消防防災航空隊で起きた悲し事故から数日たち、思うところを書き連ねます。

 

 事故の原因究明

報道ベースでしか情報を取れないので、正直な所事故の原因を知るすべもありません。

 

そんな中、新聞やネット情報の見出しに、「事故の原因究明」という文字が飛び込んでくるので、そのことについて少しお話しします。

 

誰のための原因究明なのか

事故の原因究明という文字を読んだ時に、皆さんならどういったことを頭に思い浮かべますか?

 

おそらく、その人それぞれで持つ経験から、事故原因に対する考え方が違うと思います。

 

長野県は、当該事故を起こした当事者ですので、当事者目線で今後の再発防止策を、住民に対して示さなければならない、と考えるかもしれません。

 

警察は、もちろん県の職員という立場ですが、事件性がなかったかという立場にたつと思います。

 

ご遺族の方は、なぜ事故が起きたかを明らかにして、自分たちの愛した人たちへの気持ちを整理したいかもしれません。また、同様な事故が起きて、自分たちと同じ思いをさせたくないので再発防止を願うと思います。

 

そして、同業者であるレスキューパイロットは、パイロット自身の技術面やクルーとの連携がどうなっていたのかをはっきりさせたいと考えるかもしれません。

 

あくまで、自分の想像で書いてます。

 

言いたかったのは、情報源が一緒でも、その情報を得た人の「捉え方次第」で情報の解釈、価値が変わってしまうということです。

刑法:業務上過失致死傷罪

先ほどの、警察がどう見るかという点でお話ししましたが、警察はその業務上、刑法に則った捜査をしなければなりません。

 

ですので、現場検証や当該事故を起こした機関への聞き込みなどが行われるでしょう。

 

そして、航空専門家ではないので、得た情報を航空専門家への意見聴取をしたり、事故調査委員会発表の資料も使用するかもしれません。

 

こればかりは、私も航空事故の当該者から聞いただけですので、実際の捜査がどのようになっているのかわかりません。

 

でも、一つ言えるのが、関係者の皆さんが真実を追求し、事故再発のために努力した結果、それを検察が利用し、ある特定の個人の刑事罰を訴求することに繋がることを恐れます。

 

自分は裁判を経験したことがありません。

 

でも、裁判によってある人の人生が大きく変わってしまったことは知っていますし、そういう人と一緒に勤務をしたこともあります。

 

空を飛ぶ世界に戻ってこれたにしても、その代償は大きいものです。

 

今回の長野県消防防災航空隊の事故では、生還者がいなかったので当該パイロットなどはそのような思いはしなくて済むと思いますが、残された人の気持ちを考えると、同様なことがあるかもしれません。

 

亡くなった上に、業務上の過失があったと認定されたら、心が穏やかではないと思います。

 

 

国土交通省航空・鉄道事故調査委員会

 

先ほど、事故調査委員会と言いましたが、国土交通省に設置されているものです。

 

これは、1971年に自衛隊戦闘機に全日空機が接触し両機とも墜落した事故以降、その事故教訓から設置されたもので、当初は航空事故調査委員会だったものが、列車事故も扱うようになり、航空・鉄道事故調査委員会となったものです。

 

自衛隊にも航空事故調査を行う部隊があり、その事故の教訓収集、原因究明を行なっています。

 

どちらの機関の調査委員会や部隊にしても、事故調査の権限は警察・検察にあるのが共通した力の弱さというものがあります。

 

この委員会では、事故に対して過失があったとなどという権限はなく、事故に至るまでの背景、当日の状況(人、環境)を調べ、事故に至るまでの過程を丹念に調べ、最終的に事故の主要因、副次的な要因を以後の再発防止のためにまとめることが主任務となります。

 

ジレンマ

事故調査委員会は、真相究明のために努力するのですが、その得た資料を元に警察・検察が誰かの過失を立証する資料にもなりかねない。

 

もし、私が今回の事故機パイロットと親交があった場合、故人の名誉を汚すことに繋がる発言はしたくありません。

 

真に事故の原因をパイロット仲間で話し合うときは、個人の名誉とかは関係なく、いちパイロットとしての判断ミスがなかったか、クルーとの連携はどうやっていたのか、なぜ墜落に至ったのか、など多方面で検討します。

 

情報の裏側、表側というのは、このように出来上がっていくものです。

 

 

ヘリコプターの低空飛行

今回、事故機は訓練へ向かっている最中(開始直前?)と聞いています。

マスコミ報道を見ていると、なぜ事故が起きたか不思議である、というようなことも言っていますが、私から言わせると、

 

いつ事故が起きてもおかしくない環境で訓練しているんだよ!

 

と大きな声で言いたい。

 

もちろん、自ら危ないことをやっているのではなく、災害救助の場面とは、完全に安全な場面だけではないということです。

 

その中で、最も安全に実施できる方法を考えるのがプロのパイロットです。

 

そして、その能力をどこで培うかというと、訓練、なんです。

 

パトカーに例えると、パトカーの運転手は警察官です。

犯罪者を捉えるための運転技術は、事故を起こしてはいけないから教習センターなどで練習していて、本番に備えています。なんて、言わないですよね。

 

普段の道路交通状況の中で、自分の運転技術を高めていざ本番である事件に備えるわけです。

(もちろん特別講習などで訓練されていると思いますよ。この辺り知識がないので嘘を言っていたらすいません。)

 

話を戻して、空の話です。

 

訓練だからと言って、普段から民家の上で救助訓練をされたり、登山客がいるすぐ横で救出訓練が始まったら、誰かに危害を及ぼすことになりますよね。

 

航空法

そこで、空を飛ぶ人のために、航空法というものがあります。

 

この法律、昭和29年に定められたもので、その都度改定されています。

 

その中に、航空機が飛ぶときに守らなくてはいけない、最低高度というものが書かれています。

 

これは、安全を確保する上で必要な最低高度という意味で規定されています。

 

航空法には、細部まで規定されている、航空法施工規則というものがあります。

 

今回は、その部分を抜粋して記載しました。

 

最低安全高度

 

(最低安全高度)
第百七十四条  法第八十一条 の規定による航空機の最低安全高度は、次のとおりとする。
一  有視界飛行方式により飛行する航空機にあつては、飛行中動力装置のみが停止した場合に地上又は水上の人又は物件に危険を及ぼすことなく着陸できる高度及び次の高度のうちいずれか高いもの
イ 人又は家屋の密集している地域の上空にあつては、当該航空機を中心として水平距離六百メートルの範囲内の最も高い障害物の上端から三百メートルの高度
ロ 人又は家屋のない地域及び広い水面の上空にあつては、地上又は水上の人又は物件から百五十メートル以上の距離を保つて飛行することのできる高度
ハ イ及びロに規定する地域以外の地域の上空にあつては、地表面又は水面から百五十メートル以上の高度
二  計器飛行方式により飛行する航空機にあつては、告示で定める高度

 

知らない人が見たら、よくわからないと思いますので少し解説します。

1 大前提、陸上部でも洋上部でも人や家屋に危険を及ぼしてはいけません。

(高速で飛行する戦闘機が衝撃波で起こす影響は別の規則で安全を確保していますので、この規則には当てはまりません。)

 

 

2 人や家屋が密集しているかどうかの判断は、この条文でははっきりとしていませんが、山中にある一軒家と市街地にある住宅街をイメージするとその違いがわかると思います。

  簡単に考えると、通常の住宅密集地などでは、そんなに高い建物がないので約300メートル(1000フィート)以上を飛行します。

  それが、高いビルなどが多くあるところを飛行するときは、そのビルの高さから300メートルの高さを飛ばなくてはいけないので、東京都心では少し複雑です。

わかりやすい図を使った説明をしている人がいたので参考にさせてもらいましょう。

hamapro.blog.so-net.ne.jp

ヘリコプターが離着陸するときは、この最低安全高度以下に降りていく必要がありますので、都心であったもビルの近くを飛ぶことがありますので、勘違いしないでください。

 

最低安全高度というものがあったら、災害救助現場を想定した訓練ができないですよね?

 

その時のために、現場パイロットは最低安全高度以下の飛行を国土交通省管轄の航空局または空港事務所に提出して、その許可を持って訓練をしているんです。

 

元職場では、サイアン(最低安全高度の最・安をもじった略)と呼んでましたが、一般的には81条(航空法で第81条が最低安全高度)とか言っているのを聞いたことがあります。

 

以下にその許可をもらうときに必要な規則を抜粋しています。

低空飛行の許可

(最低安全高度の飛行の許可)
第百七十五条  法第八十一条 但書の許可を受けようとする者は、左に掲げる事項を記載した申請書を国土交通大臣に提出しなければならない。
一  氏名及び住所
二  航空機の型式並びに航空機の国籍及び登録記号
三  飛行計画の概要(飛行の目的、日時、径路及び高度を明記すること。)
四  最低安全高度以下の高度で飛行する理由
五  操縦者の氏名及び資格
六  同乗者の氏名及び同乗の目的
七  その他参考となる事項

 

業務の分担により、国土交通大臣の代理が航空局と空港事務所に割り振るされています。

簡単に分けると、

 

空港事務所:日中、飛行機が少し低い高度で捜索のための訓練をするとき

 

航空局:人や物をつり下げたりするとき(ヘリの救助訓練や物資運搬)や夜間での抵抗度飛行

 

ですので、元職場でこの業務をよくやっていたので両方へ申請書類を提出してました。

 

今回の事故は、訓練中でしたのでおそらくこの申請を出していると思いますが、報道上う方では、どの区域で申請されているかがわからないです。

 

さらに深く考えて見ましょう。

 

事故が起きた時は、許可申請が間に合うの?

実際に災害や行方不明者を救助するときは、この申請を出した後に飛行しているの?

 

そうですよね、そう考えるかもしれません。

 

でも、そんなことをしていたら人命を救うことはできないです。

 

東日本大震災では、数え切れないほどのヘリコプターが救助活動していましたから、そんな申請をするのも大変ですし、申請を受け付ける側も審査できないですよね。

 

そのために、次のような条文が法律で規定されています。

 

(捜索又は救助のための特例)

第百七十六条  法第八十一条の二 の国土交通省令で定める航空機は、次のとおりとする。
一  国土交通省防衛省警察庁都道府県警察又は地方公共団体の消防機関の使用する航空機であつて捜索又は救助を任務とするもの
二  前号に掲げる機関の依頼又は通報により捜索又は救助を行なう航空機
三  救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法 (平成十九年法律第百三号)第五条第一項 に規定する病院の使用する救急医療用ヘリコプター(同法第二条 に規定する救急医療用ヘリコプターをいう。)であつて救助を業務とするもの

 

 

 

つまり、事前に国などの期間で捜索・救助する航空機は、実際の任務では何も考えずに救助活動ができるようになっています。

 

民間機を持っている人が救助をしたい!というときは、この法律では除外されません。

 

もともとこの法律ができた頃には、そんな人たちがいなかったから盛り込まれていないだけかもしれません。

 

私は将来的に、自分で山岳救助ヘリを運行する会社を運営したいなという夢があります。

 

そのときは、空自のOBがその能力を発揮してくれると思います。あとは、資金の問題・・・・

 

 まとめ

今回、事故に対する捉え方は、その立場によって大きく変わるということを初めにお伝えしました。

 

それを踏まえて、低高度での訓練をするにあたりどのような許可だ必要であるのかを考えて見ました。

 

全てのプロパイロットはこの規則を知った上で訓練していますので、法的には問題ない状態で日頃の訓練を行なっていると思います。

 

ただし、規則に精通している人と、そうではない人がいるので、その解釈に齟齬が出るかもしれません。

 

ましてや、報道で流れる情報は、情報元がはっきりしないので信ぴょう性があるのかないのかもわかりません。

 

そんなに低高度に降りなくても、ホイスト(救助するウィンチ)があるから高いところで救助すればいいんじゃないの?と思うかもしれません。

 

でも、高い高度で救助したときに、救助員と遭難者が機内に収容されるまでのリスクが高まります。ホイストを長くのばしたことにより、大きく揺れる可能性もあります。

 

短時間に救助する、リスクを少なくするために、自分の機体をギリギリのところまで下ろす。これは、誰もがやっていること。

 

その中で、事故が起きないように外の監視を行っています。

 

そういった訓練をやっていたと、多くの人には理解して欲しいです。

 

そのことが、現場で働く人のやる気につながり、困難な状況にも折れない心を保てる一つのリソースになるのです。